第11話俺と過去と 1

小6の頃両親が離婚した。

この頃父はほとんど家に居なかった。

当時、弟2人は小3と幼稚園児で父がいない事に疑問を持ち母に、

「お父さんは今日も帰って来ないの?」

と何度も質問をしていた。それに対して母は、

「遠くで仕事だからね。」

と誤魔化していた。

長期休みになるとたまに父が来て、どこかに遊びに連れて行ってくれた。


中1のクリスマス前、俺は父に話があると呼び出された。

「少しドライブでもしよう。」

そう言われ車に乗った。

少し離れたコンビニに止まった。

「何か飲むか?」

そう言われ飲み物を買いに行き、車に戻った。

なかなか話を切り出さないので俺から聞いた。

「話って何?」

「…もうすぐクリスマスだろ?サンタの正体は俺なんだよ。」

ネットで調べたりして知っていた。

「まーそうだよね。」

「だから将来子供が出来たら頑張れよ!」

「うん。話ってそれだけ?」

父の口調や仕草でなんとなくまだある事は分かった。

「いや、実はもう一個の方が本題なんだけど…」

「けど、何?」

「今、家空けてるだろ?…実は離婚してんだよね。」

「そーなんだ。」

正直言ってなんて返したらいいのか分からなかった。


離婚の原因は母が始めた宗教が原因だった。

別に今までと変わらないなら俺はどうでも良かった。

だが、父に離婚の事を伝えられてからすぐに大きく変わった。

母が俺の同級生の家に宗教勧誘をするようになった。

後から聞いた話だが、『あの家の子とは遊んじゃダメ。』と言われていたらしく、俺の周りから友人が減った。

それだけではなく、母の帰りが遅くなりほぼ毎日のように、机の上に2000円〜3000円位置かれていて、『今日も遅くなるからご飯はこれで。』と書き置きがあった。

友人とも遊べず、洗濯に掃除にご飯と中学の3年間は地獄の日々だった。


中3になり、高校はなるべく家から離れた所に行きたいと思い探した。

同級生と被りたくなかったのも一つの要因だ。

家事をやっていたせいで勉強はダメダメだったが、

それでも行ける場所を探し、俺にとって長かった3年間が終わった。


高校に入り、俺はすぐにバイトを始めた。

家に帰るのが嫌だった。

アルバイトは家に居るより苦ではなく、教えてくれる先輩も優しかった為どちらかと言うと楽しかった。

仕事に入れるだけ入りたいですと言ったので毎月8万程稼いでいた。

趣味を作れずいた為、何に使ったらいいかとか分からずに貯めていた。


夏休みになり、母に言われた。

「おばさんが高校生になったなら遊びおいでだって。」

俺はすごく嬉しかった。嫌いな家から離れられると。

その時から毎年いとこの家に遊びに行くようになっていた。


夏休みが終わりアルバイトの方も慣れて来た為、俺は部活を始めた。

途中から部活に入ったからかなり浮いていた。

だが1人話かけてくれる子がいた。それが咲良さくらだった。

咲良のお陰ですぐにみんなと打ち解け、部活仲間と遊びに行く様にもなった。

アルバイトでなくても帰りが遅くなる日が増えていた。

そこから母の機嫌が悪くなった。

遅くなるたびに怒鳴られ叩かれた。


俺は家出をした。


始めは友人の家を転々としていたが、母が学校に電話をしたせいで先生から注意をされ泊まる場所がなくなった。

それでも帰りたくなかった俺は、夜中は警察の目を避けて公園に、昼はシャワーを浴びにネットカフェに、夕方はアルバイトしに、学校に行かずに1週間程そんな生活をしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る