第10話いとこと俺と気遣いと

「はー疲れた。」

カチッ

いつものダーツバーに着き俺はタバコに火を付けた。

「おーおつかれー、すごい疲れてるねどーした?」

ダーツバーの店員さんが声をかけてきた。

「いやーいとこが来てて連れまわされてます。」

「いとこ?いくつ?」

「今年なりたてのJKです。」

「えっ?1人で泊まり来てんの?」

「そーなんですよー、連絡もなしに急に。」

「あらまじか。とりあえず何飲む?」

「生で!」

「おっ珍しい!」

そう、とても珍しい事である。

俺は基本的に飲める方ではあるが、将来飲まなきゃやってられないってのを防ぐ為に自粛している。

体を温める為には使うが、ダーツをしてる間は狙い定まらなくなるからあまり頼まない。

「はい、生!」

「あざっす」

相当疲れていたのか俺は半分以上一気に飲み干した。

「アァー!うまっ!」

「早っ!」


店員さんといとことの話を少しした。

「だから今日はご飯作って待っててくれてるので、早めに帰ります。」

「了解!」

俺はかなりのペースでタバコを吸いお酒を飲んだ。

ダーツの練習をしていると、他の常連さんに話しかけられた、

「いとこ連れてこないの?」

「いやー、一応誘いはしたけど大人っぽい場所でしょ?って言われて断られた。」

連れて来たら連れて来たで絶対に周りに絡まれるので、内心断ってくれてホッとしていた。

『押し倒すなよ』とか『新しい彼女か?』等と散々言われ大変だった。


『まだ帰って来ないの?』『暇ー早くー』

結愛ゆめから連絡が来ていて俺は帰る準備をした。

「もう帰るのか!?」

「いや、いとこが…。」

「そうか嫁さん待ってるもんな!」

「嫁じゃないです!とりあえず帰ります!おつかれさまでーす。」

帰り際にみんなに絡まれたが、無視して店を出た。

(いやーまーまー飲んだな、早く帰ろう。)


少しふらつきながら家に着いた。

「ただいまー」

「おかえりー、遅いよー。…お酒飲んだ?」

「少しな。」

「絶対少しじゃないでしょ、私もうお腹空いたから早く座って。」

「先に食べてても良かったのに…」

「一緒に食べるの!」

「わかったからそんな怒るなよ。」

結愛はキッチンに向かいご飯を温めなおしてくれた。

「私の前でもタバコもお酒もいいんだよ?」

そう言ってくれたが俺は断った。

「20歳になるまで待つよ。」

「それまで一緒に遊んでくれるの!?」

余計なことを言った気がした。

「まー別にいいけど。その前に結愛は可愛いんだから彼氏とかできるだろ?」

「何急に照れる。告白とかはされるよ?」

「付き合わないのか?」

「んー別にいいかなー。好きな人いるし…。」

結愛とこんな話をするのは初めてだ。

「いつか振り向いてくれるといいな!」

「…うん。多分無理だけど、いつかね…。」

そんなに遠い存在なのか、珍しく弱気だった。


「それはそうとお兄ちゃんが出かけてる間に、布団届けに来たよ!」

「おうそうかそうか良かったな!」

また連絡なしの父に少し呆れた。

「お兄ちゃんさー、お父さんと仲良いよね。」

「そうか?男同士だからじゃないか?」

「そーゆもん?結構電話したりするじゃん。」

「んーまー仲良いのかもな。」

「お母さんとは?」

「何年も会ってないよ。」

うちの両親は離婚をしていて、結愛はその事を知らない。

「そーなんだ、たまには会いに行きなよ。」

「余計なお世話だ。この話はお終い!明日友達来るし、お風呂入ってきな!片づけとかしとくから!」

「はーい。」

俺は結愛に過去の話をするべきか迷っていた。

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