第18話 戦場――三人の男
場面はまた変わり、スレイが戦った防衛戦の別基軸での出来事。
シャトーは、腕の立つ部下数人だけを連れて、戦場へ赴いていた。
市街地。ここが防衛戦だ。石造りの家が並んでいる。
迷彩服を着ていて眼光が時々鋭くなる……それがシャトーの特徴だが、誰からも信頼されるオーラを放っている。
「隊長、異常ありません!」
隊長――シャトーのことだが――と呼ばれるのはあまり慣れない。大抵の任務は一人でこなしていたからだ。
「ありがとう。しかし戦場というのは気が滅入りますね……」
シャトーはため息交じりに言う。
「そういえば隊長は、何故『狼』に加わったのですか?」
シャトーの部下の一人、ケビンが訊ねる。戦場で無駄話をするのも滑稽だが、緊張をほぐすためには良いのかもしれない。
「昔なじみの男がいましてね。私と、そいつと、私たち二人の親友の男。三人で理想を掲げたのですよ」
「どんな方です?」
興味を持ったシャトーの部下が訊ねる。
彼はライムだ。
「真面目な男と、野心家の男。私はさしずめ尻拭い役と言ったところでしょうか」
「はぁ……」
ピンと来ないようで、ライムはうーんとうなり始める。
「その男二人は、その後どうなったのですか?」
「男二人は違う道を歩みました。私はその中の、真面目な男の方につきました。そうそう、君は何で『狼』に加わったのかな?」
ケビンに向かって質問する。
「母ちゃんに腹一杯食事を食わせてやりたくて! ここ数年まともに食料も無かったですから、少しでも――」
「危ない!」
シャトーがケビンを押し倒す寸前に、ケビンのこめかみを銃弾が貫いた。
「くっ、長距離射撃ですか……」
シャトーが得意とするのはショートレンジからミドルレンジ辺り。ロングレンジの戦いは苦手としている。
「ライム君、君は手榴弾をあちら側に投げてください。私たちはそちらに向かいます。君と君、ここから動かないように」
手早く指示を出す。
「さて、行きますか」
そう呟いた刹那、ライムが投げた手榴弾が爆発した。
敵兵の中心地に手榴弾は着弾した。この爆発だけで、4人は巻き込まれただろう。シャトーが素早くそちらに回ると、敵兵が脇から飛び出してきた。
パンっ。敵兵が引き金をひく寸前、シャトーのリボルバーが閃いた。
そしてもう一発。伏兵であろう敵にリボルバーを撃ち込んだ。
「クイックドローは得意なのですよ」
誰にとも無く言う。
「ここは制圧ですね。まだまだ先に進みたいところですが、次回に取っておきますか……」
シャトーの目が妖しく光る。この目は人に見せたくないな……そう思い、一度目を閉じた。
悲しいな。ふと思う。また一人部下を死なせてしまった。部下が死ぬの何度も見てきた。何度見ても慣れない。それが正直な感想だった。
先ほどあんな話をしたせいだろか。色々なことを考えてしまう。
あの二人の男はきっと剃りが合わないだろう。見ているゴールが違う。シェーメル。お前は正しいといえるのか? ヨシュア、お前は親友を撃てるのか?
そして私は私の出来ることをしよう。二人の決着の立会人として。
もう夕日が差し込んでいる。戦場で死にゆく者を慰めるかのように。
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