第5話 復讐
十年。
人間が変わるのには十分な時間かもしれない。
全く別の道を歩んだ二人。
共通しているのは、お互い、お互いを探し合ってたことくらいであろうか。
まず切り出したのは、ユラの方だった。
「お元気でしたか? 『狼』が壊滅してから全く足取りが掴めなかったので、もしや死んでしまったのかと不安でした」
「つい最近までかくまってもらっていた。残党狩りが厳しいからな……」
エメラが吐き捨てるように漏らした。
「ええ。反乱軍は粛正しないといけませんから」
にこやかな笑みを……だがどこか憎しみを感じさせる笑みを浮かべたユラが、当然のことのように呟く。
「何故だ! 革命は終わった。今更残党狩りをしたところで誰一人救われない!」
「理由は二つ。まず、革命がもう一度起こらないように、火種は消しておくこと。そしてもう一つは。」
そこで一旦言葉を止め、
「私怨、です」
奇妙な空気が二人の間を流れる。
「私怨……? どういうことだ?」
「革命は多くの人の命を奪いました。そして、最も大事な二人を失いました。そのことへの私怨、ですね」
「大事な二人……?」
「一人は今目の前にいます。しかし心は私のそばにありません。もう一人は亡くなりました。残酷な『狼』に狩られて」
「分かるように説明してくれ!」
エメラの頭は混乱していた。最も大事な二人? 目の前にいるということは一人は私なのだろう。しかしもう一人は……?
「お姉様、もう一人が誰だかわからないって、顔に書いてらっしゃいますわよ?」
「誰なんだ?」
「私たちのお母様。残酷な『狼』に撃たれて。しかも撃ったのが最愛の夫という悲しみまで背負って……」
「嘘だろ……」
エメラの顔が蒼白になる。夫…つまり父さんが母さんを殺した……? そんな馬鹿な……エメラには信じられなかった。
「私の目の前で、お母様は息を引き取りました。私は革命と、反乱軍、そしてその中でも『狼』を心から憎んでいます」
「そんな……」
「お姉様。本来ならば私はお姉様を処分しないとなりません。しかし、姉妹ですから、一つの条件を飲んでいただけたら恩赦ということにしたいのです」
「条件……?」
「はい。残党狩りの指揮官になっていただきたいのです。知っている情報を元に指揮を執れば、反乱軍の粛正が一歩進むと思いまして」
そう、ユラにとっては一石二鳥なのだ。
エメラを自分の庇護下に置けて、その上私怨を晴らすことが出来る。
「断るよ。銃殺刑にでもしてくれ」
「お姉様……。愚かな人ですね……。私は二度のチャンスは与えない主義なのです。誰か部屋に来なさい!」
ユラが大きな声で外に話しかける。
「はっ。如何なさいましたか?」
外から兵装を身にまとった男が入ってくる。
「この者を牢獄へ――」
そういった刹那。
どごん。
近くから爆発したような音が聞こえた。いや、まさに爆発音だった。
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