第3話 追い詰められた狼

もし戻れるならいつに戻りたいのだろう……。

十年前、もっと前?

いや。生きる時間は今しか無い。

エメラはたまたま通りかかったバーでアルコールを飲んでいた。

私が出来ることは、今、あの子を探すこと。

きっと前に進める。止まった時間を動かせる。

信じてる。そう、それだけを。

「お客様、お勘定を」

エメラが酔い覚ましをしてるところにバーのマスターが声をかけてきた。

「これで良いかな?」

少し多目に現金を渡す。

「ええ、また是非ごひいきに……っ!」

マスターの顔が引きつった。

「動くな。動けば引き金を引く」

エメラの後頭部に、硬いものが当たる。銃口であろうと察した。

「残党狩りの連中か?」

落ち着き払って言葉を紡ぐエメラ。

「違う。私は任務としてここに来た。さるお方からお前を連れてこいとのご命令だ」

「相当不躾なやつだな、そいつは」

「縄で腕は縛らせてもらう。抵抗は……しないでいただきたい」

これでは従うより他無い。

エメラは諦めて、彼……声からすると男性の命令に従うことにした。

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