第4話 異世界の理
「どこなんだよここわ……」
気が付いたとき、オレは見知らぬ場所にいた。どうやら異世界に転生しちまったようだ。死んだ覚えはないはずだが、変だな?
「ステータス!!」
とりあえず叫んでみる。目の前の空中にオレのステータス画面が現れた。
名前:トーヤ
LV:5000
HP:999999999999
MP:999999999999
AP:800000000000
DP:700000000000
SP:900000000000
LC: 1
SK:超絶剣技/物理無効/魔法無効/自動回復/自動蘇生
どうやらオレはチート転生したようだ。運の低さが気になるが、これだけのステータスがあれば何の問題もない。イイネ☆
「さて……」
これからどうしたもんか。さしあたり近くの村でも探すか。
近くの村にやってきた。村の入り口には看板が立っていて、そこにはこう書いてある。
『ここは南の村です』
日本語かよ。雰囲気は中世ファンタジーなんだがな? 看板の隣には一人の男がいた。
「よぉ、どーも」
「ここは南の村だっぺよ」
「……大変そうだな?」
「んだ。この看板さえありゃあ、ワシはもうお払い箱じゃねえかと思うだよ」
「だったらよ、オレと一緒に旅に出ないか? オレはチート冒険者なんだが」
「そらええ考えだ」」
こうしてオレは村人Aを仲間にした。
名前:村人A
LV: 50
HP:4500
MP: 800
AP: 70
DP: 310
SP: 90
LC:9999
SK:回復魔法
おいおい、ほんとにただの村人か? めっちゃイイカンジじゃねーか。回復魔法が使えるってのもポイントが高い。
こうしてオレたちは旅に出た。
草原を抜けて川原にやってきた。するとそこに人が倒れていた。
「トーヤどん。女の人が倒れてるっぺよ」
「やったぜ。ついにヒロインの登場だ」
うつ伏せに倒れたその女を村人Aが仰向けにした。そこでオレが見たものは……ッッ!!
「さっそくワシの回復魔法で回復させるっぺ」
「……おい、やめろ」
「へい?」
「そいつを起こしちゃならねえッ!! そいつは陽キャの化身ッ。そいつが目を開けば瞳の輝きでこの世界が光に包まれちまう……ッッ!!」
「ええことでねえか。なーにが不満だっぺ?」
「実は……実はその女はオレの幼馴染なんだ……ッ!!」
「なあんだトーヤどん。『持ってる』っぺなあ! こーんなカワイイ子が幼馴染けえ? 幼馴染ヒロイン最高だっぺよ」
「うるせえこのマヌケッ!! 幼馴染がヒロインになれるかッ!! 幼馴染ごときがッッ……ヒロインなんかになれるわけねえ……ッッ!!」
「なれるっぺよ」
「あ!?」
「幼馴染はヒロインに……なれるっぺよ」
村人Aは澪に回復魔法を流し込んだ。それと当時に村人Aの体が透き通っていく。
「お、おい!?」
「どうやら、これがワシの最後の回復魔法みたいだっぺ」
「なんだと!?」
「どうか忘れないでほしいっぺ。幼馴染は……ヒロインになれるっぺよ……」
そう言い残して、村人Aは光の粒子となり空へと昇って行った。
「む、村人A--------ッッッ!!!!!!」
こ、こんなッ……こんなに悲しいのなら……ッッ!! 最初から仲間なんかいらなかった……ッッ!! オレはチートマンッ、一人で何でもできるんだ……ッッッ!!
「う、う~~ん……」
澪が目を覚ました。
「あれ……あの、あなたは?」
おっと違った。どうやら澪によく似たこの世界の住人のようだ。
「オレはトーヤ。チート冒険者だ。アンタは?」
「ボ、ボクはミーオっていいます……」
ミーオの服はぼろぼろになってる。足なんか裸足だ。村人Aの回復魔法で治す前は、たしか血だらけだったはずだ。しかも首には首輪が嵌ってる。その理由を聞いてみたいところだが、触れちゃいけないような気もするぞ。
「で? どうしてこんなところに倒れてたんだ?」
「えと……ボクは旅商人に買われた奴隷だったんですけど、歩けなくなったんで置いていかれたんです……」
なるほど奴隷なのか。それで首輪の説明もつく。
「おっけ、わかった。そいつが捨ててったものなら、オレが拾おうじゃねえか」
「えっ」
こいつは村人Aがオレに遺していったものだ。せめてどこかの町で町人の身分を買ってやろう。それでこそ村人Aも安心して天国に行けるってもんだ。
こうしてオレたちは近くの町にやってきた。にぎやかな町だ。立派な商店がいくつも立ち並んでいるし、大通りにはたくさんの露店が出て大勢の人でごった返している。
「にぎやかな町だな?」
「そ、そうですね」
「この町の町人の身分を買ってやろう。それで商売でも始めて人並みに暮らせよ」
「は、はい……あの、でも……どうしてそんなにボクに親切にしてくれるんですか?」
「あ? それはな……」
そのとき、下卑たひげ面のオッサンがオレたちの前に立ちはだかった。
「よォ、ニイちゃん!! いい奴隷を連れてるな? その女、俺に金貨百枚で売れよ!!」
「うるせー! 酒くせえんだよ!! それにこいつは奴隷じゃねえ!! オレの幼馴染だ!!」
正確には幼馴染によく似た女だが、この際そんなことはどうでもいい。だが、オレがそう言った瞬間、場の空気が明らかに変わった。オッサンは驚愕のまなこを見開き、通行人たちも全員、こっちを見ている。おい、なんだよ!?
「おいニイちゃん、知らねえのか!? 領主様の命令で幼馴染同士は結婚しなけりゃならねえんだぞ!? なにせ領主様であるオサナナジミスキー伯爵は幼馴染み属性保持だからな!!」
「な、なんだとぉ!!!?」
罠だ。罠にハメられた。そういう気分だ。そんな気分のままオレたちは宿屋にやってきた。ツインベッドの個室だ。もうここしか空いてなかったんだ。どうすんだこれ。気まずすぎるだろ。ミーオは自分のベッドに腰掛けてもじもじしている。なんだよ、なんかしゃべれよ。
「あの……ボクたち、幼馴染だったんですね……?」
いやちげえよ!? わかってんだろ!? お前の小さいころ、オレいた? いなかっただろ!?
「あの、ボク……」
脱ぐな。おい脱ぐなよ? もうぴくりとも動くんじゃねえ。いいか?
「トーヤさんは命の恩人ですし、だからボク……」
言うな。その先は言うな。ついでに言えばお前の命の恩人は村人Aなんだよ……ッッ!!
「トーヤさんっ、どうかボクのこと、好きにしてください……っ!」
「いや、しねえよ!!!!?」
オレは飛び起きた。そこはオレの部屋だった。どうやら夢だったようだ。当たり前だ。あんなイカレた異世界があってたまるか。いや、あぶなかったぜ。夢の中とはいえ、もう少しでヤバみ満載の経験をするところだった。
いや、しかしそれにしても……。こんな頭おかしい夢を見るとか、オレも相当追い詰められてんな。いったい……いったいオレはどうなってしまうんだ……。
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