🍚2019/9/10[日常生活]初めてのボルダリング、そして一夜限りの過ち

 同僚にボルダリングジムに誘われた。

 ボルダリングは全身の筋肉を使うらしいし、有酸素運動もやらなきゃと思っていたところだったので、これは渡りに船。二つ返事で行ってみた。

 でも、まさか、それがあんなことになるなんて……。



 未経験の僕と同僚A、そしてボルダリング2回目の同僚B。

 初心者同士で和気あいあいと楽しんでいたけれど、1時間ほど経つと様子が一変する。全員の腕と指はパンパンになり、ペットボトルを持つことすら困難な状態に。初心者はどうしても腕の力を使ってしまうから、腕の限界が先に来てしまうらしい。

 とはいえ、十分楽しめたし、いい運動にもなった。少しコツもつかめそうで、これからもやりたいな、なんて思っていた。


 異変はジムを出てすぐに訪れた。


 異常な空腹感が僕を襲う。

 有酸素運動でいつも以上にカロリーを消費したせいだろうか。マラソン終盤の飢餓感に似ている。

 家に帰ってサラダチキンでも食べるつもりだったけれど、それまでとても保ちそうにない。


 ふと、同僚が言った。


「ラーメンでも食べて帰りましょうよ」


「いや、僕はダイエット中だから遠慮しときますよ。二人でどうぞ」


 そう言ったつもりだった。

 なのに、口からは全く別の言葉が出ていた。


「いいっすねえ!」


 そうだ。今日は“チートデイ”というやつにしよう。うん、そうしよう。


 心の中のそんな囁きに、僕は屈してしまったのだ。


 同僚と共に駅近くの日高屋に入る。

 そういえば最後に食べたラーメンも日高屋だったっけ。

 僕はラーメン・半チャーハンセットとコーラを注文した。


 何事も中途半端は良くない。

 今ここで徹底的に満足させよう。

 そんな都合のいいことを考え、欲望のままにむさぼり喰らう。


 まずはコーラを一口。

 ああ、天からしたたる甘露のように鮮やかで。


 そしてスープを一口。

 ああ、地を巡るけたマグマのように力強く。


 さらに麺を一口。

 ああ、人を繋ぐ切れないえにしのように不可思議で。


 気付くと全ての皿を空にしていた。


 糖分が入ったせいだろうか、頭が妙に冴えている気がする。

 まるで熟睡したあとにスッキリと目覚めたような感覚だ。


 それと同時に、自分の心情の変化に気付く。雲一つなく風も凪いでいる穏やかな海のよう。

 自覚は無かったけれど、食事制限でストレスが溜まっていたのかもしれない。それが一気に解消された。

 言葉通り、満足した満ち足りた


 そう考えると、“チートデイ”もあながち間違いではないのかもしれない。



 ……でも、トレーナーには秘密にしておこう。

 そう。これは一夜限りの過ちなのだから。

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