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 同じく夕の光を青白銀しょうはくぎんの鎖帷子の上に煌めかせ、聖女が言った。流れ落ちていく陽の赤さは、戦装束に届くと、色合いの深さが異なる様々な黒糸の織り成す意匠の上で、溶けるように消えた。


――暗月あんげつの頃なれば、夕刻は長い。聖柱みはしらの聖女どのが決戦の約定に従い、銀旗を掲げるならば、陽の残るうちに応じて、かたの礼を尽くそう。狭間の階へ。門の準備を願います。


 言葉を告げ、聖女は衣擦れの音もなく戦装束の裾を閉ざしたまま、武具を手に魔道士がひらいた飾り布を抜けた。回廊の、緩やかな傾斜に沿って平行に切り開かれている石の窓は細く、夕差しの赤光しゃっこう足下そっかに落ちて血の色をとどめている。あとに続く魔道士が言った。


――心得ました。目録の魔道書より、道越えの門の術を開きましょう。秘力ひりょくの流れを定め、風見の符印を打ちます。行く先はいずれに。




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