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 強まる風が、降り始めた雨を巻く。西より流れてきた雲が落とす雨を、沈みゆく陽の、鮮やかな光が削いでいる。雨が朱に染まった。


――枯色こしょくの地を踏む聖柱みはしらの者たちの道ゆきが、の地にあらば、陽の落ちた頃には約定の継ぎ目に愈々いよいよ、届きましょう。今宵は暗月あんげつ、夜の深さは宵闇さまのご加護を強め、闇のものたちは枯土こどの外に向かい、信仰の届かぬ土の奥に潜むやも知れませぬ。


 居室の入口を塞ぐ紫紺の飾り布の傍らから、言葉とともに目録の魔道士が一歩、進み出た。空の色が落ち、暗く沈んでいく室内にあって、法衣の頭巾の内より流れている磨き上げた銀の光沢を持つ髪に、夕時ゆうどきの陽が残っている。黄金こがねの眼が、星のない夜空の色の顔貌にあった。

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