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 窓より望む宵闇の地は、黒く焼けている。屍界しかいより放たれたほのおが、かつて命を大地の上から払い落し、熱に溶けた遺骸は土に染み込み腐毒となった。人が足を踏み入れることはなくとも、腐毒に惹かれた闇のものたちは宵闇の地に集い、その気配は土の下より届く、乾いた骨がきしむ音にも似た闇のものたちの謳声うたごえとして、この地に現れている。

 風音かざおとに重なるその声を、聖女は風を見据え、の中で聴いた。死への賛美と共に宵闇に忠誠を誓う闇のものたちの声には、聖女への畏怖が込められている。聖女の気配を感じたのか、闇のものたちの声は細くなり、そして途絶えた。


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