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 約定やくじょうの威力を受けて前へと進むその歩みは、虜囚のように重い。陽を受け、赤く滲んだ白銀しろかねの武具によそおわれた軍勢は、その全てが少女であり、天を指す槍の動きは、風に揺らぐ若木のように乱れている。先陣には聖柱みはしらの聖女が立ち、威容を保ってはいたが、宵闇の地へと向かう足取りが重いのには、変わりがない。

 巫呪ふじゅの威力を収め、壁に預けていた大振りの戦鎚いくさづちを手に取り、聖女は、籠手より下がる短い鎖の先のかぎを、柄頭つかがしら飾りにつないだ。

 護拳の付いた柄軸えじく逆手さかて持ちにして、左手にげ、右手で籠手に連なる鎖を引き寄せ、石壁を切り欠いて作られた窓の縁に置かれた円形の小盾に、かぎを繋ぐ。左右の手に武具を携え、聖女は窓の外に広がる宵闇の地へと、視線を向けた。


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