第4話
夜が明け、ついに仕事をしなければならない日になった。仕事場に行く途中、何度も不安感に押し潰されそうになったし、何度足が止まったか分からない。
やっとの思いで仕事場につくと、そこには加藤大佐が待っていた。
「もう捕虜の方は入っている。梶原も中には入れ」
加藤大佐は昨日とは全く違う冷めた口調で話し始め、鉄扉の南京錠に手をかける。
それを開けると、昨日のと同じ血の匂いが充満していて、部屋の中心には捕虜と思しき外国人が縄で縛られ座っていた。
捕虜は下を向いていたが、僕に気づくと、こちらを刺すような目で睨んできた。その目を直視できず思わず目を背けてしまう。
遅れて加藤大佐が入ってきて鉄扉を閉めた。
「この男はマテウス・コッシュ、我々が捉え、今は情報を仕入れるために日々尋問を受けている」
よく見ると、この捕虜の手や顔には殴られたような痣などが浮き出ていて、日々拷問を受けていることを生々しく示していた。
「最初の尋問は私がやる、だがこれからは尋問も、それで情報を吐かなかったときの拷問も一人でやってもらう」
そこから十分程尋問が為されたが、捕虜は結局口を割らなかった、何を聞かれてもただただ無言でこちらを睨みつけるだけである。
「割らないか……梶原、仕事だ」
加藤大佐が僕を呼んだ。ということは今から僕はこの捕虜を拷問しなければならないということでもある。
震える足をむりやり動かし、捕虜の前まで来ると、加藤大佐はあるものを渡してきた。
少し血の染み付いた、ペンチだった。
「これでこいつの指を折れ」
背筋がゾッとするぐらい冷たいの口調で、加藤大佐は命令してきた。
僕は震える右手を左手で抑えながら、ペンチで捕虜の指を挟んだ。ペンチから微かに肌の弾力が伝わってくる。
そして僕は、
「本当に……情報を吐く気はないんですね?」
と最後の確認をした。というよりは、助けを求める様に。捕虜が情報を吐きさえすれば、僕はこんなことをしなくて済む。だが捕虜の方は、依然としてただただ無言で睨みつけてきていた。早くやれとでも言わんばかりに。
そして僕は二人から刺すようなめで見られるこの状況から逃げたくて、捕虜の指をあらぬ方向へと曲げた。
ペキッという乾いた音と共に、捕虜が呻くような声を上げた。
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