第9話 癒術士は男の娘

 はっきりいって、今目の前で起こった事が何だったのか頭が追いつかない。


 落ち着け自分、おそらく原因はあのジーナとゆう我の強い女が魔法的な何かをしたんだろう。

 魔法があるとか憧れるな。

「俺も使ってみたいな魔法…………そうだ! 魔法だよ! 鮮やかに使いこなせばそれはそれでプラスになるじゃないか」


 そうと決まれば善は急げと言わんばかりの陽気な気持ちでギルドの扉を開けた。



「どうしてそんなことやるんですか」


 建物の中にフユの怒声が響きわたっていた。


 その怒ってるそもそもの理由を俺が作ってしまっていると考えると、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。 



 急いで先程案内された部屋に戻ろうと、廊下に少しうつむいたフユがいた。「すいません、普段なら来た人をいきなり追い出すなんて絶対にしない人なんです」


 そこまで俺が気にくわなかったのだろうか。


「なんで俺あんなに嫌われてるの? 初対面の人間追い出すってよっぽどのことだと思うんだが」



「その理由がカオルが弱いからと一点張りでそれ以外の事は何一つ教えてくれませんでした」


 確かに俺はスライムから逃げ回って、フユに助けてもらわなければ死んでいても可笑しくはなかった。


 しかし、それは何もあそこまでするほどの物なんだろうか。



「本当にすいません。でもジーナさんはホントは凄く優しい方なんです。そこだけは勘違いしないで下さい」


 この子は仏か何かだろうか?


 心が広すぎますよ。



「嫌な気分にさせてすいません。でも次の人はいきなりあんな失礼な事はしないので安心して下さい」


 さすがに俺もそこまで物騒だとは思ってはいないが先程のことがあり少し身構えていた為その言葉を聞き少し安心した。


 しかしなんだろう、男の癒術士ヒーラーとゆうのも釈にさわる。



 フユは目と鼻の先にある別のギルドメンバーの部屋まで連れていってくれた。


 コンコンと扉をノックして部屋に入っていった。


 釣られて俺も部屋に入っていくと目を疑う光景が目に入ってきた。



「突然失礼します。実は新しい人がこのギルドに入ってきてくれたので紹介しにきました」


 俺は直前まで男だと聞かされていた。


「そうなんですか⁉ 始めしてタマキです。癒術士ヒーラーです。17歳です。あまり表だって戦うのは苦手てなんで、後衛でのサポートを頑張ります!」


 俺は男だとずっと思ってた相手は予想を斜め上にいく男の娘だった。



 なんでだよ。


 せめて、好青年的な感じであって欲しかった。


「あぁ……初めまして藤田馨ふじたかおるです」


 キャラの濃さに顔負けして腑抜けた声しか出てこない。


「どうしたんですか?カオル。もしかして、さっきジーナさんに他に何かされたんですか?」


 そっちじゃないんだ……少し残念なんだ。



 タマキの姿は男とゆうのに僧侶等の聖職者の服をしており、緑色のボブの頭

、女性の姿をしているのに性別は男とゆうことに脳の処理が追いつかない。

 神様……どうしてこんな可愛い女の子が男なんですか?

「そういや、さっきフユが大きな声で怒鳴ってるのが聞こえたんだが何があったんだい? 今日はお祈りの日だからこの部屋から出れないもんだから、飛んで行こうにも出来ないもんでさ」






「実は……」

 フユはジーナとの揉め事を詳細に説明をわかりやすく丁寧に説明してくれた。

「それは本当かい? あのお人好しのジーナがそんなことを、珍しいこともするもんだね」

 俺を置いてけぼりにして会話が始まった。

 当然、お人好しなんて言われてもあんなことをしておいて、俺にはジーナに対し好感は持てないのだが、おそらく普段の様子は良いものなんだろう。



「どう思います? 弱いって理由だけで初対面の人を追い出すとか」

「どうともねぇ僕が話に言っても良いんだけど、今日は大事な日だからここから一歩も出れないし、そうだ! 明日一緒にダンジョンに行くってのはどうだい?」


 今日、スライムにも殺されかけたんで正直勘弁して欲しいんですが。



「良いですね! 背中を預け合えばお互いに理解を深められますからね! やっぱり冒険は偉大ですね」


「あの、出来たら危ない事はしなく無いなぁと」


「何を言ってるんですかそんなの馴れと筋肉でなんとかなります」


 また脳筋ですか。



「やめときなフユその筋肉押しは、ほら、カオル君が困ってるよ」


 よきせぬフォローが入ってくる、まさかのここに置いてのまともなやつがこの男の娘だとは考えもしなかった。

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