第8話 初めてのスキル

時間ってのは意外と喋っていたりすると、あっとゆうまに過ぎる物で、あまり長く歩いているとゆう感覚なく、気づけば既に街の中にいた。


 特別何かあったとか、敵と遭遇するなどはなく帰りは安全に何事もなくてホッと一息ついてる。



「帰ってこれましたね」


「そんな大袈裟な。少し危ないところはあったけど、特に何事もなかったじゃん。それにダンジョンってゆうのに入ったわけじゃないんだしさ」


「何を言ってるんですか。二度とここに戻ってくる事は無いかもしれない、そんな冒険から無事に戻って来れたんですよ」



 確かにその通りだ。


 俺が憧れてたアニメやラノベの世界には簡単に楽して無双する物ばかりで、危険なところから命あって帰れることが、フユの行動を見ていると如何に自分が甘い考えをしていたか身に染みて感じた。


「じゃあ返ったら必ず言うことを大きな声で言って下さいね」


 そう言うとフユは扉に手を当て、ゆっくりと開けた



「「ただいま」」 


 良かったぁ、内心ただいまで良いのかと、思ってもし文化が違ったらどうしようて、もうヒヤッヒャッで心臓飛び出るかと思った。


「じゃあさっき、私のミスでやりそこねた事、やりますね」



 フユが奥の部屋から大事そうに何かを持ってくる。


 まってました。 


 アイテムボックス、仕様によっちゃそのまま敵を殺すこともできてしまうスキル。


 持ち運びの必要な道具や食料などを入れ身軽に行動することも可能な便利な力、異世界ファンタジーって感じで胸が高鳴ってくる。 




「では、ここにサインして下さい」


 フユは契約書だろうか? 俺に手渡してきた。


 ご都合主義のはからいによって見たことも無い文字が読める感動と、どうしてそれを渡されたのか頭に大きなクエスチョンマークが思い浮かぶ。




「あの、これは、いったい?」


「私のギルド加入者に関しての魔法が仕組まれてる契約書です。それに名前を記入すると自動的にアイテムボックスが使えるようになる優れ物なんでよ」



 なんだろう、この少し残念な感じは俺はもっと水晶的な物に触れてとか、そうゆう感じで貰えるものと、かってかってに思っていたので微妙なものでだった。


「ここに書いたらいいだな」


 俺はその書類に名前をスラスラと書いてゆく。


 すごい、自分が見たことも無い、今日初めて見た言語をスラスラとかけることに感動している。


 まるで自分が頭が良くなったような、そんな錯覚を味わうのは正直気持ちよかった。



「はい、ありがとうございます」


「これで使えるようになってるのか? パッと見た感じ何か変わったようには思えないけど」


「強くイメージしてみて下さい、例えばあそこにある椅子を自分の中に取り込んでいくような」



 強くイメージ、椅子が自分の物……体に入っていく。


 すると、そこにあったはずの椅子がいつの間にか消えていた。


「次に、今しまったものを出したい所に置くようなイメージで」


 元の場所に戻すのを強くイメージする。


 すると今度はその椅子がもう一度姿を表した。



「おめでとうございます。それがアイテムボックスです。一度にしまえる数には上限があるので使うのは必要最低限の物にしておいて下さいね」


 今気づいた事が一つだけある。




 このスキル地味だ。


 初めてのスキルと思って期待していたのに何か心を揺さぶられるものがある訳ではなく、火や水を生成する魔法のように可視化して良くわかるようなものではない。


 なんか、色々ガッカリだよ。




「じゃあ次は同じギルドメンバーに挨拶しましょう」


 感傷に浸ってる時間を与えられる事はなく、次の行動を始める。


「きっとあの二人も新しい人が入ってくると知ったら喜びますよ」


 そう言ってその二人のいる部屋まで案内される。




 召喚されて、もうすぐ半日たつのだろうか? ようやくフユ以外の人と関わりが持てることに喜びつつも、気が弱いと言う男の癒術士ヒーラーのことが妙に引っ掛かっていた。


「ここが召喚士サモナーがいる部屋です。少しズレてるトコロがありますけど、きっと仲良くなれますよ」


 ズレてるって、どれくらいズレてるのか結構重要な処なんですが。



 フユは部屋の扉をコンコンとノックしそのままプライバシー等お構い無しというかのように部屋に入って行った。


「起きて下さい、もうすぐ日が沈む時間なんですよ。いつまでそんな、ぐぅたらな日を過ごすつもりなんですか」 


部屋の中には、もうお昼などとうに過ぎてるのにまだベッドから出ていないパジャマ姿でボサボサ頭の少女かいた。



「ねぇフユ? その人誰?」


「よくぞ聞いてくれました。ジーナさん! なんと今日新しくギルドに入ってくれた人なんです」


 そう言ってフユは俺のことを軽く話してくれた。




「初めてまして藤田馨です」


 特に言うことが思いつかず定型文の自己紹介になってしまった。


「へぇー男が入ってくるか、言っとくけどフユは甘々で色んな事すぐに許しちゃうけど私は厳しいからね」


 パジャマで寝癖がついたまま言われても全くもって説得力が無い。




「せっかくカオルが入ってくれたのにその言いようは無いんじゃないですかジーナさん。一応さっき一緒にちょっと冒険に出て無傷で帰ってくるってゆう実績があるんですよ」


 ちょっと、フユさん⁉ 何かってに俺の恥ずかしい話自身満々に話してるんですか。


「無傷って言っても、どうせフユがサポートしまくっただけでしょう?」


「そんな事ないです! しっかりスライムに一撃与えてました」


 いや、俺逃走してたんですが…………




「仕留めてはいないんだろう?」


「でも狙った所にちゃんと攻撃は当たってたんです」


 二人は言われたら言い返しの口喧嘩に発展しかけない勢いで言葉、口調が強くなってくる。



「なんで、ジーナさんは新しい人を受け入れようとしないんですか」


「単純に弱いやつがここにいても、あしでまといなだけじゃない」


 なんか、ごめんなさい。




「兎に角、新しく入ってきてくれたんで仲良くなって下さいね」


「なんで、そんなわざわざ私は馴れ合いをしにこのギルドにいるんじゃないんだからね」


 なんだろう、入って数分でこの場から立ち去りたくなってきた。


 この二人が言い争いを始めた原因が自分にあって、それが弱いからとか救いようがない。


 もう、なんなんだよ。




「取り敢えず、そこのあなた汚らわしいのでこの部屋から出ていってもらえる?」


「その、言い方はさすがにない――」


 そのとき一瞬で体が青白い光で包まれ、眩い閃光が体を包こんだ。


 なんだ、あのジーナって女何をしやがって…………


 気がつくと何故かギルド前の初めてこの世界に来た場所に立っていた。

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