第4話 筋肉です!筋肉があればありとあらゆることが解決します!

問屋がないと売る物を調達できない。


「えっと……素材から商品を作って、それを買い取って店を開いてるやに売る店なんだけど、ほんとに知らない?もしかして問屋ない?」


 俺は持てる知識を総動員させて、説明をする、意外とわかりやすく伝えるのが難しい。






「なんですか? その店。商品を作ったなら自分で売ればいいじゃないですか、わざわざ別のところに行って買い取ってもらってなんてしてたら、時間がかかるじゃないですか。そもそも商売?ここはギルドなんでよ。なんでちまちま人に媚び売らなければいけないんですか! ギルドならギルドらしく依頼を達成したり、ダンジョンに潜って一攫千金を狙うものなんです。そんなちまちまとしたやり方認めません。」






 そう言いながら、腕で頭にバツ印作りジェスチャーまでして拒否された。


「おいおい、確かに物を売るってのも簡単じゃないけど、命まで落としかねないようなことをするよりはマシじゃないか?俺はそんな危ないことはしたくない」


 チート能力で無双が期待できない以上、容易に死にかねない。


 命あっての人生だから、こんな最序盤では危ない橋を渡りたくない。






「なら、しっかり装備を整えて安全を確認しながら慎重にやればいいじゃないですか、近くに住む魔物を討伐するだけでも、かなり稼げたりするんですよ」


 このまま、この話にのっていたらフユの思惑に引っかりダンジョンまで突入するかもしれん。


 どうにかしてたら折り合いをつけなければ…………






「わかったけど、見て分かるかもしれないけど俺まともに戦えないぞ」


 戦えない、これは冒険を生業としてるものから見たら致命的、一見、肯定しているように見えて実は嫌だと優しく主張する。


 これほどまでに、都合よく相手の考えを変える方法ははない。






「ならガチガチに筋肉でかためましょう!」


ん…………えっ…………


「筋肉です、鎧をきて動くにも大剣を振り回すのも、弓を射るのにも、戦いにおいて必要なものは筋肉!戦えないとゆうのなら筋肉をつけるまでです」


 フユはよだれを垂らしながら熱弁した。






 筋肉フェチかよ! 可愛いウェイトレスが筋肉フェチなんて誰得なんだよ! 世のオタクたちを考えくれよ! そもそもまとに筋トレなんて俺はしたことない。


 恐ろしいことにフユは生粋の筋肉フェチらしく、まだ筋肉について熱く語っている。






「筋肉です! 筋肉があればありとあらゆることが解決するんです」


 それはちょっと暴論過ぎませんかね、フユさん。


「わかった、わかったから一旦落ち着いてくれ。そもそも猶予は1ヶ月しかないのに筋肉の付きようもないだろう」






 痛いことを言われたのか、さっきまで勢いよく軽快に喋っていたフユが急にだまりこんだ。


「そんなこと言ったて、しょうがないじゃないですか。あと1ヶ月で5000万も用意しなくちゃいけないんですから、今からでも行動を起こさないと間に合わないですよ。とにかく今は何かしましょう! ダンジョンに潜りましょう! 依頼をこなしましょう! いい武器を持てば魔物を倒しやすくなり効率が上がる! いい武器を持つには筋肉がいる! 利にかなう行いをしましょう」






 変えない、この人考え方を変えるつもりが全くない。


「わかったよ、じゃあやろう。ダンジョンに潜ろう」


 結果折り合いをつけるどころか、一方的にフユの言うとおりになる形になってしまった。


「ただ、俺は死にたくないし、痛いことも嫌だ」


「誰でも、そうですよ。そうと決まれば装備を整えましょう。死なないために今できる最強の用意を整えて、胸踊る冒険に出ましょう!」


セナは装備を整えるために奥の部屋に入っていた。








 ーー胸踊る冒険、この世界にきて諦めていたけど、正直少しわくわくしてる自分がいるとゆうことは、まだ諦めきれていなかったらしい。


「カオルはどんな武器を使いたいんですか?人は少ないですけどここ一応はギルドなんで結構いいのあったりするんですよ」


 そうってフユは奥の部屋から様々な武器を取り出してくれた。






 斧、弓、片手剣、大剣、ナイフ、はてや大きめの杖なんかまででてきた。


 迷いどころだ……この選択に俺のこの世界での活躍具合が決まると言っても過言ではない。


 力の限りるり回し強力な一撃を与える斧、知的に立ち回り味方を援護する長距離の弓、初心者にも扱いやすく王道をゆく片手剣、RPGなどで俺TUEEEEするので有名な大剣、近接で相手に近づきテクニカルに戦うナイフ、魔法にも興味はあるが使えるかどうかわからないので、論外。






 ーー憧れに少しでも近づくには……


「よし、俺はベタに片手剣でいくよ。なんといっても扱いやすそうだし」


「わかりました。じゃあ、ここにある中で1番良いものを持ってきますね」






 また、奥の部屋に入り片手剣を取りに行ってくれた。


 かなり綺麗になっているのだろうか?10秒もしないうちにでてきた。


 「フゥーフゥー」


 片手剣を持つ姿はウェイトレスにはとても思えないガニ股でフゥーフゥーと息を荒くしながら両手でかかえてもってくる。






「女の子なに不格好なことしてるの! 可愛い見た目が台無しじゃんか」


「可愛さなどこのギルドに入るさいにとうに捨てました。今はカオルのために…………ハァ…ハァ…」


 今の発言に少しもったいないと思うが、それが彼女の生き様なんだろう。


 しかし女の子がこう、自分を思って自分のために行動してくれる様子はなんとも愛らしい。






「ハァ……ハァ……軽く素振りしてみて下さい!」


「あぁ、ありがとう」


 初めて手にする剣の感覚にうれしさがあり、興奮している。


 手にした剣を上に、振り上げる!








「あれっ……あの……持ち上がらないんですが…………」


 何度も何度も力を入れて反動も使ってまで持ち上げようとする。


「えっ……ちょ……まって……」


 息を荒げてたとはいえ華奢な女の子が持てた物を持てない…………泣きそう。






「あの、別に強くなくていいので、もっと軽いものにしてください」


 フユは悲しい目をしていた。


 やめて、その目をするのはやめて! ちゃんとこれから毎日筋トレするから、いろいろほんとに申し訳ないです。


「大丈夫ですよ、きっと頑張ればそのうちなんとか…………」


 言葉を言い終わる前に口ごもる、筋力なくてすいませんでした。






 結局その後も片手剣を試して見たが、持ち上げることはできても重い物を振り回す反動で腕をつってしまうので、ナイフを使うことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る