ロボ

 ロボだ。

 見た目は凄くスーパーロボットぽいロボだ。ボトムズみたいな実用性重視でリアルなロボとは違う。子供受けしそうな装飾がたんまりと乗せてあるロボであった。

 顔とかマジカッコいい。顔の大体の形は中世の騎士を思わせるシルエットをしている。そこから黄色く光る目は逆三角で、マジンガーZとかガンダムとかである奴と同系だ。

 体とかもまぁ中世騎士っぽい。だが、所々に子供心をくすぐられる装飾があった。

 たとえば、肩。筒っぽい物が目の前を指すように、肩に乗っけてある。この先っぽからレーザービームでも打ちそうだ。というか打て。ロボットが構えて肩から、ぎらぎら輝くビームが出る姿とかめっちゃくちゃカッコイイ奴じゃん!

「なぁ昭子! これ何なんだ? なんだコレ? めちゃ糞カッコイイこのロボットは何だ!?」

『さぁ?』

 さぁってなんだ、さぁって。

『私がころ――おねんねさせたドラゴンの巣の中に刺さってたんですよ』

「なんで殺したことをオブラートに包もうとしてんだ? ⋯⋯それはともかく、刺さってたってなんだ?」

『言葉通りですよ。巣の中で頭から地面に刺さってたんですよー』

「刺さってたからと言って、此処まで持ってきた理由は?」

『これが新しい荷台の代わりになりそうだったからですねー』

 荷台の代わり?

 そう思った瞬間、ノイズまみれの音声がロボから鳴る。

【繝「繝シ繝峨メ繧ァ繝ウ繧ク?夊サ願シェ】

 マジでノイズだらけで何言ってんのかは分からない。何を伝えようとしているのかの考察すらできない。

 ロボが金属音を鳴らしながら変形を始めた。腕や足、首が人間ではありえない可動域に回転変形拡大縮小伸びたり縮んだり別れて別の部品と合体。

 そして数秒が立つと、シルエットがロボから四輪のトラックに変わった。

『このロボットはbluetoothで接続できるんですよ。私がこのロボが気になって横に立った瞬間に自動的に接続されました』

「勝手に接続されるなんて、絶対厄ネタやん」

『まぁ確かに怖いです。接続して操作しようにもコンソールが文字化けしてて何が何やら分かりませんし⋯⋯』

「よくそんな奴を此処まで持ってきたな?! マジこえーよ!」

 俺は怖さでロボ⋯⋯じゃなくてトラックから距離を置いた。

『まぁでも、便利そうでしたので』

「便利よりも怖さが俺の精神を支配してるよ」

『ですけどこのトラックはかなり快適ですよ。問題があるとしたらエネルギーが尽き掛けてている事くらいです』

「便利だから大丈夫っていう理論が納得できないんだよなぁ」

 たとえば、俺のナノマシンが今勝手に接続してる端末とかも恐怖の対象でしかない。

 というかこのこと昭子に話すの忘れてたな。今は話そう。

『ああ、それならすでに知ってますよ』

「え?」

『私は介護アンドロイドなので介護対象について常に把握していなければなりません。つまり、翔ちゃんのナノマシンに私は常に接続して監視してます』

「へー⋯⋯言ってくれよ! なんで俺のナノマシンに変なのが接続されている事を伝えてないんだよ!」

『言ったらパニックになりそうですしー』

「まぁ⋯⋯なるな⋯⋯」

 確実にうわああああってなる自信があるな。現在なってないのは色々と疲れてしまっただけで、健常状態ならパニックになる。

『しかしまぁ、不思議だと思いませんか?』

「不思議って、いや不思議なことが多すぎて、もう深く物事を考えるのやめたくらいだわ俺」

『例えばどんなことが不思議だと思いましたか?』

「あー⋯⋯。

 一つ、あの日記には確かこの世界が中世並みの技術しかないと書かれていたのに俺らを接続できる機器があるのか。

 二つ、なぜファイアーウォールを突破して俺のナノマシンに接続できたのか。三つ、接続プロトコルが何故俺らと一緒なのか。

 四つ、プロトコルが同じなら何故文字化けを起こすのか。

 五つ、 《魔法.exe》がなんで蝙蝠熊の攻撃経由でインストされたのか。

 六つ、 《魔法.exe》を使うと何故か魔法が使えるのか。

 ⋯⋯テキトーに挙げるとこの位か? 他にも気になっていたり、謎だったりするところはあるけど、ナノマシンに絞ればこんくらいだな」

『一つ抜けてますよ』

「ン? 何かあったっけ?」

『一つ、矛盾しているところがあるじゃないですか』

「矛盾⋯⋯?」

 そんな点、あるか?

 まぁ人間よりも高性能な電子頭脳をお持ちな昭子がそういうのであれば有るのだろう。とりあえず地面に謎を書いてみてみる。

 指で書くと爪が汚れて凄く不快だったので、途中からその辺に落ちてた木の枝で書き書き。

 そして5つ目の初頭を書いている途中で、気づく。

「あ、コイツ文字化けしてねぇ!」

  《魔法.exe》はこの世界に来てから何かインストされていたアプリケーションだ。つまりこの世界由来の情報媒体なのだが⋯⋯文字化けしていない。

 他は漏れなく文字化けしている。LPWAv25で勝手に接続されてた端末名は文字化けを起こしてて、このロボトラックも文字化けしていた。

 なのにこの 《魔法.exe》はちゃんと文字化けせずに正常に動いてしまっている。

 これはどうしてだ?

 この異世界の意味不明な情報媒体の差出口は一つではないのか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る