ドラゴンちゃん

 暇つぶしとは何なのか?

 そもそも暇とは何なのか?

《ロック中です》

 お前には聞いてないよナノマシン。そう思うと《ミュートモードにしますか?:y/n》と通知が来たので、そうしてくれと念じる。

 というか、元々ミュートモードだったなこのナノマシン。俺が使っている《とっても健康君Mark-2534》は高機能だが非常にうるさい。うるさすぎて価格ドットコムの評価が星2つだった位だ。まぁその分安くて俺としてはとても助かったけど。

 話を戻して、暇とは何なのかだが、まぁやる事がないという状態であるとしよう。

 そしてやる事を無理やり見つけて、それに没頭することが暇を潰す。と表すことが出来るのだ。やる事を見つけて没頭すればそれが暇つぶしだ。

 というわけで、やれそうなことを探す。

 なかった。



 ◇◆◇◆◇



 やる事が無い人間が起こす行動は、基本寝る事だ。外出るの怖いし。

 とりあえず横に寝転んだ。洞窟の床はもちろん硬いので辛かったが、することない状態で立っているのも苦痛だったから、ぼぉっとしてた。

 そんでしばらく時間が過ぎると、昭子の声が聞こえてきた。

『翔ちゃん。おはようございます』

「⋯⋯おはよう」

 挨拶を返して起き上がる。昭子が手を振りながら片手にドラゴンの首を引っ張っていた? はい?

『あ、今日から仲間になるドラゴンちゃんですよー。はいドラゴンちゃん、翔ちゃんに挨拶してね』

「ぎぎゃあ⋯⋯」

「え、ええ⋯⋯?」

 俺は困惑した。なんでドラゴン持ってきたの昭子?

 そのドラゴンは小型だ。大型犬位のサイズ。昔おとなりさんが飼っていたゴールデンレトリバー位のサイズだと思う。

 また、水タイプっぽい体色をしていたので、昭子と空中戦をした水ドラゴンとなんか関係があるかもしれない。あれと親子関係だったとか。

「⋯⋯で、なんでそのドラゴン持ってきたんだよ? というかどっから?」

『この子はドラゴンちゃんですよ翔ちゃん。ちゃんと名前で呼んであげてください』

「ぁぁぁ⋯⋯」

『ほら、ドラゴンちゃんも、そうだと言っています』

「そのドラゴンの声、昭子が首を強く掴んで出しているよね?」

「ぎゅげ⋯⋯」

『違うよってドラゴンちゃんが言ってます』

「ばっちり昭子が強く掴んでるね。あ、もうかわいそうだから返事はしなくていいよ。持ち方も優しくしてあげて」

『まぁ翔ちゃん! とっても優しい子に育ってくれたのね!』

「お前が色々とおかしいだけだわ」

 昭子はドラゴンを掴んだ腕を下ろして放す。その瞬間、ドラゴンが暴れた。

 体をひねらせて昭子から距離を取り、尻尾をぶん回して攻撃。だが、それを分かっていたかのように昭子はジャンプで回避する。そして空中から落ちて、ドラゴンの頭を押さえた。

 グゲゲっとドラゴンの悲鳴が洞窟内に響く。

『ただ、まだドラゴンちゃん暴れちゃうのでしばらくは首を抑えたままですねー。きっちり調教しないと』

「お、おう⋯⋯」

 少し前に仲間って言った奴に調教するんかよ。まぁこんな凶暴な生物が隣に居るってだけでゾッっとするから正解だけどさ。

「⋯⋯とにかく、説明をしてくれ。そのドラゴンは『ドラゴンちゃんですよー』⋯⋯ドラゴン、ちゃ、んは何処から引っ張ってきたんだよ」

『ドラゴンちゃんは、私が戦ったドラゴンの⋯⋯舎弟的な感じです。あのドラゴンを倒した直ぐに襲い掛かってきて、それはそれは親の仇のような勢いで攻撃してきましたねー』

 それ、実際に親の仇だったのでは? 舎弟とかじゃなくて。

『ここまで連れてきた理由ですが、私たちの移動を助けてくれると思って持ってきました。荷台引かせれば、私が翔ちゃんを運ぶ必要はないですからね』

「あー⋯⋯。でも荷台はどうなったんだ? ドラゴンの水球でぶっ飛んだ気がするんだが」

 もし荷台が無事だったとしても、あれ揺れがひどいから人が載るものじゃない。

『実は、変なものがあのドラゴンの巣にあったんですよ』

「変なのってなんだ、変なのって」

『まぁ見ればわかります。洞穴の入口前に置いてありますので見てください』

 じゃあ見るか。そう思って歩いたら腰がいてぇ! 寝違えてたことを完全に忘れて歩いていたのでうぉおおお!! っとなった。

 腰を押さえて地面上で悶絶していると、昭子が俺の肩を持って、そして足を背中の下に置いた。なんだと思った1秒後、思いっきり体を引っ張られてえええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!

 介護アンドロイドなのになんで人間様に手を出しているんだコイツ! っと怒りゲージがマックスになった。だが昭子の引っ張りが痛すぎて数秒したら四散したその思い。

 引っ張りから解放される。うおおおっと良く分からない声が出てくると同時に、体が若干心地よい。腰に違和感が無くなっていた。寝違えが無くなっていた。

『早く言ってくれれば、マッサージで楽にさせたのに⋯⋯翔ちゃん、男の子だからと言って我慢するのは体に良くないですよー』

「いや、寝違えってマッサージで治るもんなの?」

『治ります。私、昭子にはあらゆる人体への対象法がインプットされてますので』

「俺としたら、転生装置のマニュアルをインプットしてほしかったよ⋯⋯」

 痛い思いはしたが、寝違えが治ったのは素直に助かったのでお礼を言って、洞穴を出る。

 んで、昭子曰く「変なもの」を見た。

「⋯⋯何だコレ」

 5メートル位のロボがそこにあった。

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