ロック

 あのドラゴンと昭子の戦いによって、俺たちは荷台を失ってしまった。つまり、目的地である港まで移動する間の宿を失ってしまった。

 最初はこれからは野宿でもすんのかなと思ったが、昭子が知らないうちに洞穴を掘っていた。シャベルが無いのによくやるなよなアイツ。

 新しい荷台を確保するまでは、洞穴を仮拠点として、材料集めすることになりそうだ。

 それから一晩が経った。

 いかに荷台が偉大なのかを感じる朝だった。

「体が……痛い……」

 荷台があったころは布団があった。昭子の最新ハイティクアンドロイド技術を用いた、原材料不明の無駄にやわっこい布団は俺の体にとてもやさしかった。

 だが、今の寝床はザ・地面。硬い。とにかく固い。固形。頭は昭子の膝枕によって無事であったが、体はそんなことが別になかったので辛かった。

 つまりいうと、俺は寝違えたようだ。痛い。辛い。

 だってさ、腰を若干曲げないと歩けもしないんだよ。自由に動けないことに苦痛が伴う事例を捜索の中でいくつも知ってるけど、こんな軽度な阻害でも十二分に違和感がヤバくて辛い。

 辛い辛い言いすぎるほどに言っちゃうほどに辛い。

 とりあえず、最近頼りっきりなナノマシンさんに、このつらみが何とかならないか相談してみる。するとすぐに返答が来た。

《通知:ロック中》

 ⋯⋯何だこりゃ?

 ロック? いやこのナノマシンの管理者なのは俺だから、勝手にロックとか出来ないはずだぞ⋯⋯って、分かった昭子のせいだわ。

 あの高級介護アンドロイドには認知症相手の介護にも当たり前に対応できる。

 それで俺にかかっている介護レベルは5で⋯⋯認知症どころか精神的な疾患、うつ病患者などの自傷行為を行う可能性がある相手に介護行為する設定だ。

 んで、レベル5だと、介護相手のナノマシンを掌握してロックする。ナノマシンにへんな事されたらたまったもんじゃあないからだ。

「え、じゃあ俺どうしよう⋯⋯」

 辺りを見ても洞穴の暗がりと、外へ続く出入口から光が出てくるだけだ。

 なぜか昭子がいないので、俺はここで一人だった。

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