とっても健康君Mark-2534
《危険確認[a-1]:睡眠以外の意識の連続性の途絶えを確認》
《危険対処案[a-1]:電気ショック》
《強制実行[a-1]:意識の動作が確認されていないため》
《実行[a-1]》
――体中から電撃が走る。瞬間、気絶から目が覚めた。
まだ、俺は水球の中にいた。
《危険確認[b-1]:肺内部に入る新たな酸素が検出されませんでした》
《危険確認[b-2]:肺内部に多量の水分が確認されました》
ナノマシン《とっても健康君Mark-2534》のメイン部を埋め込んだ頭蓋から音声が漏れ出る。コイツの標準機能である危険検出機能 《アラート君》が起動した知らせだ。
しかしその音声を気にする余裕は俺にはなかった。ただただ息苦しさを感じていた。
《危険対処案[b-x]:水分を電気分解し、酸素を生成》
《実行しますか?[b-x]:y/n》
呼吸が出来ない。苦しい助けてほしくて、ほしくてがぼがぼ口を動かすが、口から出てくる水分と、新たなる水分を吸い込むだけで終わってしまう。
《[b-x]エラー[c-1]:脳組織に正常な判断が行われていません》
《危険対処案[c-1]:快楽神経を刺激》
《強制実行[c-1]:エラーの確認が致命的だと判断》
《実行[c-1]》
《強制実行[b-x]:生命維持に酸素がいち早く必要だと判断》
《実行[b-x]》
「ががが――!」
口から空気が漏れる。呼吸が出来ない。出来なくて苦しいこと事態に変わりがないが⋯⋯意識が保てて余裕が保てるようになった。
なんだか余裕が出てきた。何故かは分からないが謎の全能感が俺の精神を支配していた。
周りを見ると、まあ水が広がっている。ただ、その場が水球ではあるが。
がボフゴっと口から酸素を出しながら対処法を考える。
さて、この水球に留まり続けるのはどう考えても危険だ。さっさと出るのが先決なのだが⋯⋯これどっちが上なんだ? 地なんだ?
水球を通した外の風景は緑一色だ。あの農場に植えてあった巨大植物に囲まれているのだろう。だから上下関係とか良く分からない。
重力感覚については完全に狂っている。水の中なので浮遊感があり、そしてグルグル回転しながら水球の中にいたので、俺の重力感覚はめちゃくちゃだった。
⋯⋯とりあえず出てみて考えよう。水球から手を出せば浮遊感は無くなって重力が感じやすくなって地がどちらが分かるはずだ。
俺は頭の方向へ泳ごうとするが、全然進まない。クロールっぽい動きをしたり、平泳ぎっぽい動きをしたりして必死に水を掻き出すが、進まない。水が俺を押し込んで、水球の中央に戻そうとしてくる。
もうどうすることも出来なくなったので、変な考えが浮かび上がる。そういえば
口から発音できなくても、心から念じればいけるか? っと考えて念じてみる。《なんか火が出てくれお願いだ頼む、故郷に病気の妹がそこそこの威力で飛んでいる火を見たいって言っているんだ! 本当に頼む!!》
だが発動しなかった。糞が!
《魔法.exe》って発音だけしか受け付けないのかよっと悪態を脳内でつく。
《その批評をフィードバックとして製造先に送信しますか?[魔法.exe]:y/n》
え、そんなことできんの?! イエスと脳内で叫んだ。
《エラー:インターネットに接続されていません》
《このエラーに対する、
役に立たねぇなコイツ! とりあえずイエスだ。
《対処法:電波が届きやすい場所への移動》
コイツはどれだけ俺を失望させれば気が済むのだろうか。⋯⋯まあ異世界にネットが有ったらびっくりだけども。
俺はうざ晴らしのために
《対処法:水中内発音機能 《さかな君》を使用》
あるんだ。⋯⋯あるんだ!?
驚きと喜びが混ざった感情のままに、水中内発音機能 《さかな君》を実行。このナノマシン《とっても健康君Mark-2534》の標準機能らしくすぐに《さかな君》は立ち上がった。
俺は叫んだ。
「《なんか火が出てくれお願いだ頼む、故郷に病気の妹がそこそこの威力で飛んでいる火を見たいって言っているんだ! 本当に頼む!!》」
水中内に居るのに鮮明に響き渡る俺の声。それは正常に
俺の右腕から
そいつは周りの水をジュワリと気化して⋯⋯アッチィイイイイ!!
水球は一気に熱湯と化した。水というか何ていうか、あらゆる物質は温められると面積が増す。ゆえに水球の面積は膨張して――弾ける。
俺は全身やけどを負いながら水球という檻から脱出に成功した。
地面は俺から見て右側にあったらしく、そこから緑の草マットに落ちる。あんがい大した高さは無く、体からの衝撃は少なかった。
《危険確認[d-1]:身体の広範囲にやけどを確認》
《危険対処案[d-1-1]:表面神経感覚を一時的に遮断》
《危険対処案[d-1-2]:皮膚表面の新陳代謝の向上》
《実行しますか?[d-1-x]:y/n》
「イエスだ」
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