04 姉の海


空と海との間には〜みたいな歌が流行って、流行った時に私達は生まれた。


だから、中島みゆきが好きだった両親が私達双子に海と空という名前をつけたのは自然だと思う。


生まれた時に気がついたら私とそっくりの顔の女の子が隣にいて、私には海らしい青らしいワンピースが与えられた。


セーラー服みたいな青と白のストライプが入った襟付きのワンピースだった。


そのワンピースが着たくなくて、妹の着ているレース柄の白いワンピースが欲しいと駄々をこねた私は、冷めた目で妹から見られていた。


それが私の一番古い記憶だ。双子の姉という、世の中で一番意味のない姉妹の区別を与えられたのは今では呪いに近い物だと考えている。



でも私の欲しいものはいつも妹が持っていて、妹は私が欲しいものを全て持っていってしまうのだから、ないたってしょうがないじゃないかと、姉としての私が心の中にこうして育っていった事を否定することはどうしてもできなかった。


妹と私は一卵性双生児だから、遺伝子が全く同じで、同じならば同じ思考で感覚で生きていくのが普通だと思われる事が多かった。


でも私と妹は好きな食べ物も、音楽も、映画も、ファッションも異なった。


具体的に書けば、私はラーメンが好きで、妹は冷やし中華が好きだった。私は邦ロックが好きで、妹のはアンビエント音楽を好んだ。もっとわかりやすくいうと、私は人の声が好きで、妹は人の声が嫌いだった。


そんな私達にも好きな友達がいて、いつしか好きになった人がいた。小さい頃、隣に引っ越してきてそれから高校までほぼ同じクラスで過ごした男の子だった。


漫画見たいな幼なじみで、そんな幼なじみな男の子が好きになってしまったのだった。双子の私達はこういう肝心な所だけ双子だった。

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