佑紀乃だったら

「あの、あくまでも私だったら、の話ですけど」


 張本先生が優しく首を佑紀乃の方へ向ける。


「ええ、どうされますか? お聞かせください」

「私だったらまず初めに、一緒にお話ししませんか、くらいから始めますけどね。だってまだ相手が独身かどうかも分からないんですよね」


 張本先生が視線を落とす。


「そうなんです。それすらも全くわかりません」

「だったらまずは、お店でお花を買って、その後その花をあなたに、っていうのはどうですか? そのまま手紙も渡す。もし脈無しなら返事は来ないだろうし、相当嫌がられなければ話くらい聞いてくれると思うけど」


 カンナもパーマンも黙っていたが、やがてパーマンが口をへの字に曲げた。


「まあ悪く無いかもな。その辺が無難かもな」


 カンナもすっきりしない表情を浮かべてはいたが、

 

「ま、まずはその程度でもいいかも知れないね、時間かかるかもだけど」


 と頷いた。

 ふとメガネちゃんをみると、メガネの奥の瞳をキョロキョロさせていた。


「大丈夫? メガネちゃん」


 メガネちゃんは、キョトンとして、佑紀乃を見た。


「はっ! ゆきりんさん、良いです。もし自分が花をアレンジして、渡そうとしたら、『これはあなたに』なんて! 素敵過ぎます」

 

 目がキラキラと光っていた。

 張本先生がそんなみんなを見て、やっと優しい笑顔を浮かべた。


「みなさん、ありがとうございます。では早速やってみます、結果は来週お伝えできると思います」


 それを聞いてカンナが張本の肩を、パン、と叩いた。


「先生、ガンバ!」


 佑紀乃も頷く。


「きっとうまく行きますよ」


 不死川も、何も言葉すら発しなかったが、力強く頷いた。

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