第10回目の講義:公募に応募しよう
「はい、それでは10回目の講義始めまーす。みなさーん、この講義ももう残す所あと2回ですよー。今日はせっかくなんでみなさんに公募に応募してもらおうと思います。例えばカクヨムコンというのがあります、他にも頑張る女子主人公コンテストなどもあります。どれか最低一つに応募してくださーい」
カンナは一点を見つめていた。
いつも不死川が座っている、少し明るいそのエリア。そこにスキンヘッドは無かった。何とも言えない表情を浮かべたまま講義を受けるカンナ。それに目をやる佑紀乃。
講義が後半にさしかかろうとしていたとき、ドアがガチャリと鳴った。
すかさずカンナがそのドアを見つめる。
——ひよこ豆ちゃんだ!
不死川が静かに教室に入り、そして一番前に座る。部屋が少しだけ明るくなった。
「……というわけで、みなさん。是非一人以上受賞してくれたら嬉しいです、その前にまず挑戦するということが大事です。それでは今日はここまで」
カンナが不死川にかじりついた。
「もう、またどっか行っちゃったのかと思った!」
不死川は、ははは、と笑顔を浮かべた。
「新しいバイト先の面接に行っていました。心配かけてすみません。それよりみなさん、何に応募するか決めましたか?」
パーマンが顔をにゅっとだした。
「自分は、大体ね。あともう少しで完成するから。そう言えばゆきりん全然書いて無かったよな、大丈夫か?」
「え? いや、ほんっとそう。頑張る女子主人公って、私がまず頑張らなきゃって感じだし。そういえばメガネちゃんはどう?」
メガネちゃんが自分を指差した。
「わたしですか? はい、あれから頑張っていま6万字まで来ました。消えてしまっても意外と書けるもので、むしろ最初より良い作品が書けそうな気がします」
それはよかった、と佑紀乃が声をかける横で、カンナが辺りを見回した。
「あれ、そう言えば先生は?」
パソコンを教壇に置いたまま張本先生はいなくなっていた。
「ってゆうか、パソコン開きっぱなしだし。これ」
そう言いながらディスプレイを見つめた。
じろじろとまるで舐めるように見つめ始めたカンナを見て佑紀乃が堪えきれず声を漏らした。
「カンナちゃん、あまり見ない方がいいよ。プライベートだし」
「いやいや、大丈夫っしょ、これくらい。他人のパソコンって結構面白いんだけど。へぇ、パソコンでツムツムとか出来るんだ。すげっ!」
パーマンが横についた。
「だから、お前そうやって人の個人情報覗くなよ、趣味悪いぞ」
と言いながら、横目でディスプレイを覗くパーマン。
「そうだよ、やめときなって……」
と言いながら、『パソコンでツムツム』が気になって仕方ない佑紀乃。
「先生もすぐ帰って来ると思いますし、もう離れた方がいいですよ!」
と言いながらメガネちゃんもディスプレイが見える位置までついた。
気づけば4人はディスプレイを見つめていた。
「へえ、ウケる。あの先生色々ゲーム持ってんじゃん。あれ? 何これ」
カンナがマウスを動かし始めた。
「えーっと、何だ、これ。『破滅への螺旋階段』? 意味わかんない、見てみよ」
「だから、お前、それはまずいだろ! そんなことしたら先生だって……」
「そうだよ、ダメだって」
と言いながら、みんなパソコンのディスプレイを凝視した。
「いや、っていうかダメかどうかはやってみないとわかんないじゃん? どうせ減るもんじゃないし」
カンナがそのままそのファイル、「破滅への螺旋階段」をダブルクリックする。
速やかにwordファイルはその内容を展開した。
(第3章:不死川玄太という男 了。閑話休題、破滅への螺旋階段へ続く)
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