不幸って?

 ようやく不死川の背中が止まった。

 パーマンの全身は一瞬にしてびしょびしょになった。


「ふ、ふざけんなよ! 何が不幸になるからだよ。勝手に決めんなよ、あんたがどうしようが勝手だよ、消えるなり、別の街に行くなり何でもするがいいよ。でもな、こっちが不幸かどうかはあんたが決めるんじゃない、こっちが決めるんだよ!」


 通りがかりが何事かとちらっと見ては、通り過ぎた。

 大雨に打たれるパーマ頭と、荷物を抱えたスキンヘッド。

 その二人の様子を気にしながら、多くの人影はそそくさと駅の中へ消えて行った。


「あんたのことをさ、心配でここ3日も探してるやつだっているんだぜ。あいつら、まるで捨てられた子猫がさ、母親探すみたいに必死で探してるんだよ、バカみたいに。でもさ、あいつらにはあんたが必要なんだよ、分かる? 俺のことはどうでもいい。でもな、勝手に消える前にさ、あいつらにだけはちゃんと話してくんないかな? お願いだから」


 その大きな背中が止まった。

 そして頭が垂れる。

 そのままゆっくり振り返った、そこにはあの鋭い目尻があった。

 徐々にパーマンに近づく。パーマンの息が上がっていた。

 不死川がびしょびしょ、ぐしゃぐしゃのパーマンの前に立った。

 それを見てパーマンは膝からがくりと崩れ落ちた。


「……う、うっうっ、すんません。生意気言って……申し訳ご……ざいません……で、した」


 パーマンの顔には大量の雨が降り注ぎ、その水滴が雨粒なのか、涙なのかもう全く区別がつかない状態だった。

 その塊に、不死川はそっと傘を差し出した。

 

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