捜索:土曜日

 土曜の夜はきらきらしている。

 日は落ちているのに、人の動きは軽く、そして明るい。

 一週間の平日を終え、明日の休みに胸を馳せ、笑顔がよく浮かんでいる。


 ピアットの机の上、飲み終わったカフェオレの氷をストローで吸う。


 シュコーーーーという音を鳴らし終わった最後、吸い主のパーマンの頭をぽかりと叩く者があった。


「痛って! いきなり叩くなよ、ストローが喉に刺さったじゃねーか?」

「お前、なんでこんなところで油売ってんだよ。みんな一生懸命捜してるってーのに!」


 そう言いながらカンナはパーマンの向かいに座った。


「ここに入って来る人見てんだよ、それにここからだと駅前がよく見える」

「んなこと言ってサボってるだけだろーがよ! こんなことしているうちにひょっとしたら兄さんは……」


 後ろから、佑紀乃とメガネちゃんが合流した。


「ゆきりんとメガネちゃんはどうだった?」


 二人は首を横に振る。


「全然。兄さんがよく行ってたっていうお店とか色々当たってみたけど、今までよく来てたのに最近来ないって」

「はい、聞けば聞くほど、ひよこ豆さんはいなくなっちゃったんじゃないかって……」


 カンナの表情を見て、メガネちゃんは、はっ、と口を押さえた。


「とりあえず休憩にするか? 飯食ってないだろ?」

「お前は今まで休憩してたから、今から開始な!」

「だからー……」


 現れた店員に、パーマン以外の3人はそれぞれ料理を注文した。

 全く上がらない成果に、3人は疲労の色を隠せないでいた。

 カンナがみんなの顔を覗き込む。


「ねえ、明日も探すよね、一緒に」


 佑紀乃とメガネちゃんは顔を曇らせた。


「私、明日はちょっと」

「わたしも実はまだ月曜までの課題が終わってなくて……」


 パーマンが『よくばりデミグラスハンバーグ』を頬張りながら喋った。


「気持ちは分かるけどよ、みんなだって色々あんだからさ……」

「……いい」

「え? なんだって?」

「もういい。あたし一人で探すから!」


 そう言って、頼んだ料理が到着する前に席を立った。

 それを必死で止める佑紀乃。


「あぁ、分かった、分かった。なんとかするから、でもねカンナちゃん。明日までにしない? どこかで区切りをつけないとキリがないと思うの」


 カンナは床を見つめたまま手に込めていた力を抜いた。


「……わかった。明日までに、必ず見つけるから」


 その言葉を聞いてから、佑紀乃はカンナを椅子に座らせた。

 その元気のない表情はまさに青菜に塩だった。

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