パーマンの秘策

「よく思い出して欲しい。あの男は言った、一人は殺すと」


 3人が大きくうなずく。


「つまり……ひよこ兄さんには申し訳ないが、犠牲になってもらう。そうすれば、俺らは撃たれない」


「………………」


 数秒後、パーマンのこめかみに激しい衝撃が走った。


「痛って! 誰だよ、殴ったの?」

「あんた馬鹿か! そんなの秘策でもなんでもねーじゃんよ! いっその事お前が犠牲になれ!」

「そうよ! ひよこ兄さん差し出すなんて信じらんない! パーマンが行けばいいのに!」

「は? なんで俺なんだよ、俺が死んだら悲しむ人たくさんいるだろ?」

「……パーマンさん、ひどい」

「メガネちゃんまで!?」


 男が再び銃口を4人に向けた。


「おい、そっちでごちゃごちゃ言ってんじゃねーぞ! 死にてーのか!?」

「はい、すみません!」


 黙った4人を確認すると、男は再び銃口を不死川に向けた。しかし、男はその時違和感を覚えた。銃口の先に不死川がいない。

 男が辺りを見回すと、不死川がカウンターから出て来て、入り口の前に立っていた。


「おい! 勝手に動くんじゃねー、今度動いたら撃つぞ!」


 不死川は入り口の前で立っていた。視線をずっと男の拳銃に向けながら。

 その時、ピコンピコンと音が鳴って女性客が入って来た。

 しかし、その異様な光景に気づいて、すぐさま店の外に出て行った。


「くそっ! 見つかっちまったじゃねえか。もう時間がねえ、金出さねえなら、お前だけ撃って逃げるからな!」


 ただちに外がざわつき始めた。

 野次馬がみるみるうちに店の外に集まり始める。

 不死川が入り口をバックに、一歩ずつ、男との距離を縮めた。


「おい! 動くなって言ってるだろ? 聞こえねーのか?」


 不死川は一歩ずつ、ゆっくりと歩み寄る。そしてぼそっとこう呟いた。


「……お前に、撃てるのか?」

「は? 言っとくけどこれ本物だからな、撃ち方だって知ってんだぞ」

「……そうじゃない。お前に他人ひと様のタマを取る覚悟が出来てるのかって聞いてんだ」


 不死川の声が低く響いた。

 男の手が小刻みに震える。


「うるせー! それ以上近づいたら……」

「……人間の頭がな、それこそスイカを高いところから落としたみたいになるぞ」

「ごちゃごちゃ言いやがって! お前なんか……」


 次の瞬間、さっと不死川の手が動く。

 男は咄嗟に引き金を引いた。


——あぁ、もうだめだ……


 その男の動きに、4人は目と耳を伏せた。



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