ニコマートは地獄へと変貌を遂げる

 声の主はカンナだった。

 カンナは怯えた表情で、カウンターの前にいたメガネちゃん、そしてパーマン、佑紀乃の元へ駆け寄った。


「カンナちゃん、どうしたの?」


 そう声をかけながら、佑紀乃が入り口側のカウンターに目をやると、信じられない光景が目に入って来た。


「うそ……でしょ?」


 先ほどの若者はフードが取られ、頬のこけた男の表情が姿を現した。目は虚ろで、どこか焦点が合っていない。

 それより何よりも、その場に似つかわしくなかったのは、持っていたそれだ。

 両手で握られていたのは一般市民はテレビなどを通じてしか見たことのない「拳銃」。それをしっかりと不死川に向けている。それをただじっと見つめ返す不死川。


「……カネを出せ、全部!」


 パーマン、カンナ、佑紀乃、メガネちゃんの4人はわなわな震えながら、一箇所に集まっていた。そしてみんなでパーマンを盾として前に押しやる。


「……お、おい。押すなって。なんで俺が前なんだよ」

「ちょっと、黙れって。こっちに気づかれるでしょーが!」


 不死川はびくともしなかった。


「先程売り上げを金庫に移してしまったので、ここには大した金額はありません。金目的であれば別を当たってもらえないでしょうか」

「うるせー!」


 男がさらに拳銃を不死川に近づけた。


「お前、死にてーのか!? さっさと集めろ、金! 俺は本気だぞ、どちらにしろここにいる誰か一人は殺す、せっかく手に入れたコイツを撃ちたくて仕方なくてなぁー!」


 そういって、4人の方に銃口を向けた。


……お願い、やめてやめて……


 と叫びながらパーマンを前に押し出す3人。パーマンは手で必死に自分の顔をガードする。

 そのままさっと再び銃口を不死川に向けた。

 

「おら! 早くしろ、金集めろって言ってんだろ?」


 4人は震えながら固まっていた。

 パーマンが一生懸命笑顔を作りながら顔を引きつらせていた。


「……で、でもよ、あれどうせモデルガンか何かじゃねーの? こんなとこにいきなり拳銃なんかが現れるはずないだろ?」

「あ、ひょっとして……」


 佑紀乃が何かを思い出した。


「この前ニュースでやってた。警官の携帯している拳銃が盗まれたって。ひょっとしたらあれ……」

「わたしも見ました、催涙スプレーで眠らせて奪い取ったってやつですよね。でもあのニュースってもうちょっと遠いところだと思ってたんですが……」

「マジ? それ。うわっ、これ本気でヤバイやつじゃね?」


 男と不死川のにらみ合いが続いている。

 そんな中、パーマンも真剣な表情で口を開いた。


「でも大丈夫だ、安心していい」

「ウソ!? 何それ、なんかいい考えでもあんの?」

「ああ、ある。聞きたいか?」


 3人は力強く、同時に頷いた。

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