ニコマートの様子がおかしい
ピコン、ピコンという音とともにカンナがニコマートに入ると、
「……いらしゃいませ、ニコマートへようこそ! あれ、皆さん。何かお忘れ物ですか」
不死川のしゃきっとした声が浴びせられた。
「ちょっとね、大事なものわすれちゃったー」
その後ろでため息をつく3人。
その隙に誰かが、パーマンの肩に、ドン、と当たりながら、店内に入って行った。思わずよろけるひょろりとしたパーマ頭。
「……痛ってえね、ちゃんと謝れよな」
その人物はパーカーのフードを被り、そのまま雑誌コーナーで立ち読みを始めた。
小柄で灰色のパーカー。ジーンズとスニーカーを履いていることから雰囲気は若そうだが、詳細はよくわからない。
——ったく今時の若者は、なってねーよな……
そう愚痴っているパーマンをよそに、メガネちゃんはボッコンチーニを探していた。
「たしかここに……あ、あった! よかった最後の一つでした」
最後のボッコンチーニと、バジルとトマト。目的の品を入手してカウンターに向かった。
ニコマートのカウンターは二個ある。メガネちゃんが向かったのは奥の方だった。不死川が対応する。
「……合計3点で、1256円になります」
メガネちゃんが財布から一円玉を出すのに苦労していると、もう一つのカウンター、『隣のレジにお並びください』と書いてある方に、先ほどの若者が身を乗り出していた。フードは深くかぶったままだ。
「あの、ちょっといい?」
「……お客様、大変申し訳ありません、ただいま参りますので少々お待ちください」
「急いでんだけど」
ひどく低い、乱暴な声だった。
メガネちゃんが目配せし、『先にどうぞ』と合図をした。
不死川も、軽くため息をもらしてからそのカウンターに向かった。メガネちゃんの横についたパーマンが、男の方を見ないで囁いた。
「あいつ、ちょっと変だよな。コンビニってこういうやついるから嫌なんだよな」
「そうですね、あまり関わりたくないですよね……」
そんな話をしているまさにその時だった。
「きゃあーーーーーーーーー!」
耳を塞ぎたくなるほどの金切り声が店内に轟いた。
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