閑話休題

闇に浮かぶ二つの光 3

 決して熱帯夜でもないのに、男の額からは汗がだらだら垂れていた。

 真っ暗な闇の中、PCのキーボードを必死でカタカタと叩く。

 ディスプレイから目を離さずに、片手でコップを掴む。ゴクゴクとミネラルウォーターが喉を通り越した。

 そして最後のリターンキーをバシッ、と叩く。


「…………」


 四角い顔にメガネ。その口元からは優しい声は聞こえて来ない。

 毎晩毎晩、神経をすり減らしながら、作り上げてきたこの芸術。世界を変えるために命を削ってきたこのプロジェクト。


 それがようやく今、完成した。


 ファイル名はこうだった。


「破滅への螺旋階段」

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