自信って?

「ゆきりんさん達には分からないと思います。わたしが今までどれだけ辛い思いをしてきたか」


 その声色はいつもと違って、とても冷たかった。


「何やってもダメ、失敗ばかり。親からも見放され、ダメダメばかりなんです、わたし。男の子と付き合ったことだって無いし、いつも憧れるだけで、現実は虚しいばかり。正直わたしなんて生きてる意味無いって思ってます。そんなわたしが生まれて初めて見ることが出来た夢なんです」

「でもそれは嘘の夢でしょ」

「嘘でもいいんです! わたしにはそれしかないんだから……」


 佑紀乃はメガネちゃんの肩に手を置いた。


「あのね、メガネちゃん。もうお願いだから自分のことダメとか生きてる意味ないなんて言わないで。私……もうこれ以上大切な人が傷つけられるのを見たくないの」


 メガネちゃんは肩を震わせていた。


「私はあなたの事好きよ、良いところいっぱいあるじゃない」


 パーマンも頭の後ろで手を組みながら付け足した。


「俺だってそう思ってるよ? ダメで嫌な奴だったら家にあげたりなんかしないから。まあ、勝手に上がって来てるやつもいるけど」


 カンナがつばをぺっとパーマンにかけた。


「おいおい、体液はやめろよ、体液は!」


 パーマンが必死で顔をティッシュで拭いた。


「ねえ、メガネちゃん。もっと自分を好きになって欲しい、そうすればもっと大切にできるはず」

「でも、溝端君わたしの事、大切にしてくれます。話も聞いてくれるし、LINEの返事もすぐくれるし」

「ヤバイね、それ」


 カンナがドレッドヘアをくるくるし出した。


「浮気するやつって、大体そう。メールとかLINEの返事早い奴、大体浮気してっから」


 不死川がすっと立ち上がったかと思うと、ぐつぐつ沸騰していた鍋のスイッチを消した。IHのピーという音とともにぐつぐつも止まった。


「ねえ、彼メガネちゃんのどこが良いって思ってるか知ってる?」

「それは……」

「この前聞いたの、メガネちゃんのどこが良い? って。そしたら、彼なんて言ったと思う?」

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