リビングにて
結果報告の後、リビングでメガネちゃんは質問攻めに遭っていた。
「あのさあ。デートすんの? 最近の子ってどこいくの?」
「俺だったら、映画館デート希望かな。楽だしなんも考えなくていいからな」
「あんたの希望聞いてないし。ってかあんたってほんっとつまらない男だな……」
パーマンとカンナが言い争っている横で、佑紀乃はメガネちゃんを見つめていた。
——やっぱりコンタクトにして、髪型もおしゃれにしたら、この子、めっちゃ可愛いわ。男が放っておくはずがないよ、これ。
そんなことを考えながら今一度、さらさらの黒髪を撫でた。
「そういえばメガネちゃんって、今まで誰かと付き合ったことあるの?」
「……それが、一回も無いんです。幼稚園の時、両思いってのはありましたけど」
「そうなんだ、じゃあ大事なアドバイスね。ディズニーランドみたいな並ぶところは最初はやめたほうがいいよ。待っている間に気まずい空気になるから、お互い沈黙を楽しめる様になってからの方が無難。それと男子って女子の買い物を待たされるの、すっごく嫌うから、買い物系も避けた方がいいかもね」
メガネちゃんは目を丸くして聞きながら、メモを取り出した。そしてボールペンで書き込む。
「……はい、アトラクション系と買い物系、ですね、気をつけます。佑紀乃さんってなんか恋愛のベテラン先生って感じですね。彼氏さんとかっているんですか?」
「え?」
「そりゃいますよね、こんな美人で、しっかりしてて男心まで掴みきっている女性なら」
佑紀乃の頭に何かが一瞬よぎった。
それを深く掘り下げない様に気をつけながら、ゆっくり消した。
「いないよ、そんな人。もしいい人いたら教えてね」
「へー、意外。ゆきりんフリーなんだ。あ、そーいえば……」
カンナはいつの間にか会話に入り込んでいた。
「ひよこ豆ちゃん、デートとか行くの?」
パーマンは心の中で叫んだ。
——だから、なんでお前はそうやって、失礼な事聞くんだよ。行く? 行かない? の質問から入るなよ……。
その直後、低い声が返ってきた。
「……自分、昔付き合ってた人とはよく荒川を散歩していました。昼ごはんは川辺でのんびりと。時々キャッチボールしたり……」
佑紀乃は思わず頷いた。
「それ、いい! ほのぼのしてて。いいなぁ、メガネちゃんの未来。なんかキラキラしてて」
その後も個人個人の恋愛観やそれから話が飛んで、いつの間にか芸能人の話になり、その人が出ているドラマの話になり、気づけば日が変わりそうになったところでお開きになった。
——メガネちゃん、13万字が消えるって悲しい事件だったけど、その後来るハッピーの前触れだったのね、きっと。ほんとに良かった〜。
今日は気持ちよく眠れそうだ、そんなことを佑紀乃は考えていた。
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