結果報告

 カンナは今日もランニングマシーンで汗を流していた。

 85インチ、4Kが観られる大型テレビで、残りの3人、パーマン、佑紀乃、不死川はくだらないバラエティ番組を笑っていた。


 佑紀乃はいつもいるもう一人の存在が気になって仕方ない。


「メガネちゃん、大丈夫だったかな……ちょっと遅過ぎじゃない?」


 カンナが走りながら大声をあげる。


「もうあのままホテル直行だったりして! ダメだったらさすがにもうちょっと早く来るっしょ」

「今ごろラブラブしてんじゃねーの、きっと」


 その時だった。


 ピンポーン。


 呼び鈴が鳴った。

 パーマンが来客を映す画面を見た、メガネちゃんだった。


「え? メガネちゃん?」


 佑紀乃はそれを見てから、玄関にダッシュした。そしてドアを開ける。


「遅かったね、大丈夫だった?」

「……ええ、はい」


 少しうつむきながらゆっくり玄関に入る。


——あぁ、どっちだったの? OK? ダメ? どっちでもいいから早く聞きたい……


 その気持ちが喉元でゆらゆらしている横で、カンナがにゅっと顔を出した。


「どうだった? やっぱムリっぽい?」


——うわ、やっぱこの子、ぶっこむわ……


 メガネちゃんは床を見つめていた。

 パーマンと不死川も玄関に集まる。

 メガネちゃんがゆっくりと手を挙げた。そして小さく、丸を作る。

 パーマンが、は? という表情を浮かべた。


「ん? どーゆーこと? それ」


 佑紀乃が一歩前に出た。


「……まさか、OKってこと?」


 メガネちゃんが小さく頷いた。


「うっそー! マジで? それやばくない? だから言ったっしょ、やってみたもん勝ちだって」

「お前、どうせダメだとか言ってたくせによ……」


 ゆっくり首を持ち上げると、メガネちゃんは弱々しく笑顔を作った。


「お付き合い……してもらえることになりました」


——おーーーっ! 


 玄関は思わず歓声に満たされた。

 カンナと不死川がハイタッチしていた。

 佑紀乃は目に涙を浮かべながらメガネちゃんの肩に手を置いた。


「よかったね、メガネちゃん……ほんとに……」


 メガネちゃんもにこっと笑顔を浮かべると小さく頷いた。


「よーっし、お祝いだ! 乾杯しよっ!」


 そう言ってカンナは一足先にリビングに戻って行った。

 それにつられて他の三人も玄関を後にした。


「…………」


 残されたメガネちゃんはほんの一瞬だけ、色を落とした様な、冷たく乾いた表情をしていたことに、その時誰も気づいていなかった。

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