作:メガネちゃん

 夕食とシャワーを済ませ、歯磨きをしながら佑紀乃はパソコンのスイッチを入れた。そしてピンクのUSBメモリーを差し込む。


——13000文字か、結構頑張って書いたね、あの娘。


 内容はファンタジーだった。

 主人公はとある弱気な少女、ミルキー。控えめで何も取り柄のない、そんな少女がとある理由で、異世界への旅立ちを余儀なくされる。

 旅の途中、ミルキーは多くの人達と出会う。取り柄のないミルキーだったが、その誠実でまっすぐな心が人々を動かし、様々な能力を持つ仲間を増やしていく。という展開だった。


——なかなか面白いじゃない。でもやっぱり結構長いわね、1万文字って。


 意外とスムーズに読めるストーリーだった。しかし、そろそろ結末か、と思いきや一向にストーリーは収束する気配がない。


——これ、どうやって終わらせるのかしら? というか、今何文字?


 現在の文字数を見て、佑紀乃は目を疑った。


——え、うそ。今23000文字ってなってるんだけど。元々全部で何文字だったっけ?


 もう一度全ての文字数を確認した。そしてその数字を二度見した。


——は? これほんと?


 改めて文字数を見てみた。それは13000文字ではなく……


——130000字だわ、これ。嘘でしょ? これ1日で読めって? あの娘マジで言ってんの? これ。


 佑紀乃は両手を挙げ、そのまま座っていた椅子にうなだれた。

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