ニコマート
パーマン復帰祝いはいつものコースが予定された。
ニコマートで食料調達、そのままパーマン宅へ。
「おい、何そこで待ってんだよ」
カンナはニコマートの前で立ち尽くすパーマンの頭を突っついた。
「だってほら、この時間って……」
「だいじょぶだよ、今はひよこ豆いないって」
「そうか……って何で知ってんだよ」
そう言いながら、カンナとパーマンは店内に入った。
佑紀乃とメガネちゃんは既に飲み物とスイーツを調達していた。特にメガネちゃんは料理に使う調味料選びを楽しんでいた。
「なんでこの時間にひよこ豆がいないかって? だって……」
カンナは、あっ、と言いながら冷蔵庫のアルコールを物色していた。
そしてアルコール度数9%のストロング飲料を眺める。
「おい、だってなんだよ」
「だって、ひよこ豆。今日は来れるって」
「来れる? どういうこと?」
「どういうことって、そんままじゃん。ひよこ豆も今日はパーマンの家来れるんだって」
パーマンの口がぽかんと開いた
数時間前メガネちゃんに殴られた衝撃を超える衝撃を受けていた。
「おい……まじかよ、あいつ、じゃなかったひよこ兄さんも、く、来るんですか?」
「何か文句あんの?」
「い、いやないけどさ。その……」
その時、若い男3人組がニコマートの自動ドアをくぐった。
先頭を歩くのは、白Tシャツに黒のジャケット。マッシュショートの明るい髪色はメンズヘアモデルに出てきそうなイケメンだった。
3人は談笑しながら、ブレスレットを揺らしたり、髪の毛の毛先をいじったりしていた。
「……あの、佑紀乃さん聞いてます? 今度わたしが作りたい料理っていうのが」
メガネちゃんが必死に佑紀乃に話しかけていたその視線をふと持ち上げた瞬間、突然その両手を反射的にばんざいした。
持っていたドレッシングが宙を舞う。そのままふわりと飛んだ瓶はスローモーションのように落下した後、地面に叩きつけられた。ガシャーンという音が店内に響き渡る。
「どうしたの? メガネちゃん」
佑紀乃が、固まったままのメガネちゃんに気づいてから、その視線の先を見る。するとそこにはマッシュヘアのイケメンが立っていた。
「あれ? 丹下さんじゃん。どうしたの、こんな時間に?」
メガネちゃんの頬がみるみるうちに真っ赤になった。
それから急いで、髪の毛を手で整える。
「え……あ、あの。何というか、ちょっと」
「メガネちゃん、お友達?」
イケメンマッシュが佑紀乃を見た。
「はい、僕ら丹下さんの同級生なんです、大学の。あれ、丹下さん、それ……」
メガネちゃんが落とさなかった方の左手に握られたドレッシングを見つけ、
「料理できるんだ、丹下さん。今度俺らにも作ってよ、じゃあね」
そう言ってニッコリ笑うと、佑紀乃にも会釈をして、背を向けた。
残り二人も軽く会釈をしてから、その場を去った。
しばらくメガネちゃんは頬を赤らめ、口ポカン。
まるでタコのようだった。
「おーい」
そう言って、佑紀乃はメガネちゃんの肩を叩くと、メガネちゃんは、はっとして我に返った。
「あ、すみません。私今何してました?」
「いんや、何も。感じのいい子たちだね、爽やか系?」
メガネちゃんはぶつぶつと呟いている。
「……あぁ、どうしようどうしよう、もっと……あぁ」
「何?」
「もっとちゃんとした服着て来れば良かった、髪の毛もこんなにぼさぼさで」
メガネちゃんはいつもの白Tシャツにデニムガウチョ。
髪もぼさぼさで所々跳ねている。先ほどの3人組の華やかな印象とは程遠かった。
「もしかしてメガネちゃん……あの子に……」
「いやいや! とんでもありません、私にとって溝端君はもう雲の上の存在で、もう憧れを通り越して、神というか何というか……」
「もういいよ、分かったから」
そういって佑紀乃はメガネちゃんの肩をポンと叩いた。
そしてニヤリと、不敵な笑みを浮かべていた。
(第2章:丹下 青葉という女へ続く)
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