手紙

——この手紙を読んでいるということは、きっと俺はそこにもういないでしょう。


 手紙の出だしにはそう書いてあった。


「うそー、パーマンさん、まさか死ぬつもりじゃ……?」


 メガネちゃんの顔が青ざめた。


——でも安心してください、俺は死んではいません。


「なーんだ、良かった」

「……もう、あいつがそう簡単に死ぬ訳ないでしょ、っていうかLINEの返事来てたし」



——あの日チリチリに言われたこと、独りで考えてみた。あん時は確かにかなりムカついた、だけど確かに大事なことだと思った。一度親父とお袋に会って、今の俺の気持ちを伝えてみることにした。ちょうど会える日が講義の日に重なったから、講義は欠席します。次の講義には返事がどうだったか、報告出来ると思う、よろしく。


 読み終わった後、三人はしばらく何も言えないでいた。

 

「ちょうど今頃か。パーマンのやつ、うまく言えてんのかな」

「そうね……そんな簡単に納得してもらえるとは思えないけど」


 メガネちゃんも心配そうな顔をしていた。


「パーマンさん、殴られるのかな……」

「あんたの心配、そこ!? まあ、大事なことではあるけどさ」


 結局LINEの返事は来なかった。

 その後、何も追加情報は無く、一週間が経った。

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