そこで見たものは?
「信じられないもの?」
佑紀乃も首を傾げていると、中からカンナの元気な声が聞こえて来た。
「えー? うっそー! ここで働いてんの?」
——なんだ、なんだ?
佑紀乃も声につられて中に入る。すると、
「いらっしゃいませ、こんにちは! ニコマートへようこそ」
元気な、そしてハキハキとした低い声が響いた。
そしてその店員は知っている人だった。
「えー? うっそ。不死川さん、ここで働いてるの?」
後からメガネちゃんも入って来た。
「あっ、すごーい! ひよこ豆さんの言ってたコンビニって、ニコマートだったんですね!」
——この娘、「さん」つければ意外と誰でもいけちゃうわけね。
早々とひよこ豆に慣れているメガネちゃんに佑紀乃は引け目を感じていた。
「ええ、そうです。宜しくお願いします、ちなみにチキンバー、今揚がりました。いかがですか?」
おいしそー! もらうもらうー! そう黄色い声を上げながら、カンナは辺りを見回した。
「あれ? パーマンは?」
「えーっと、さっき外にいたけど」
カンナは思いっきり眉をひそめると、
「はぁ? あいつびびってんの? マジしょぼいわ、全く……」
そう言いながら、カンナは店の外に出て、おい、待てって、と叫ぶパーマンを引きずり入れた。そして不死川の前に立たせる。
「おい、だから待ってくれって……あ、どうもこんばんは」
不死川は180cmはあるだろう長身で、小柄なパーマンを見下ろす。目は笑っていない。
「え……とあの……不死川さん、じゃなくて……あの……」
不死川は目で殺すようにパーマンを睨み続けた。
「あの……ひよこ…………あぁ、やっぱり無理だ、言えないって、俺には。せめてひよこ兄さん、にしてください、お願いします」
不死川は少ししゃがみ、目線を合わせた。それからパーマンの目を見つめた。
「いいですよ、それで」
それを聞いて、パーマンは地べたにしゃがみこんだ。
そして、うっ、うっ……とすすり泣き始めた。
「あ……ありがとう、ございます。ひ……よこ兄さん」
そんなパーマ頭を、まるで慰めるかのように不死川はぽん、と軽く叩いた。
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