自己紹介
先生とパーマ男
先生がまず立ち上がった。
「ええ、じゃあ私から。今回『あなたもステキな作品を書ける! 0から始める小説講座』を担当させていただく講師の張本
佑紀乃はその声に聞き入っていた。
——いいわ、なんか落ち着く。ゆったりとしたペースで、まるで癒しのナレーション。後は空気さえ読んでくれれば……
そんなことを考えぼーっとしていると次のパーマ男の自己紹介が始まった。
「え、と。俺は
そう言って座ろうとしたパーマ男を先生は遮った。
「
最後の「よー」はエコーがかかっていそうな声だった。
「小説? あぁ、あの言いづらいんだけど俺医学部目指してて……」
ドレッドヘア女が食いついた。
「医学部ぅ〜? なんで、今頃?」
「今頃っていうか、なんというか……俺今12浪中だから」
——じゅうにろうちゅう!? ——
何人かの声が重なった。
「あ、間違えた正確には13浪だった、ごめんごめん」
——いや、その一年はそんな重要じゃ無いし。
佑紀乃は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
「そんで今も本当は医学部予備校行けって親に言われてんだけど、気が進まないもんだからこの講座に言って予備校に行ってることにしてるんだよね」
皆がぽかんと口を開けた。
——んで、小説は?
と聞きたかったが、そのままどさっと座布団に座り込み、はい次! と促した。
——
そう佑紀乃がため息をついていると、ドレッドヘアが声をあげた。
「あのさぁ、せっかくだからあだ名つけようよ。わたし決めていい?」
「は? いい大人して、あだ名なんて今更……」
「わかった! あんたパーマだからパーマン! よくない?」
ドレッドヘア女が手のひらを、ぽん、とグーで叩いて笑顔を浮かべた。
「なんだよそれ……誰がそんな」
のんびりとした声で、先生がダメ押した。
「いいですね、和気さん。私はパーマン好きでした」
佑紀乃の隣で、黒縁メガネが、あっ! と声をあげた。
「そういう事だったんですね、私今初めて知りました」
「えっ、何? どうしたの?」
「あの、パーマンってほら、藤子不二雄のですよね? あれってパーマから来てるんですね」
——いやいやお嬢さん、ちょっと待て。
佑紀乃は思った。
「うーん、どうかな? パーマンの中にはパーマの人は確かいなかったと思うけどな、いや多分ね、自信はないけど。私はスーパーマンから来てると思ってた。後でSiri先生に聞いてみたら?」
え、ああそうなんですか、と目を丸くして恥ずかしそうに俯いた。
「はーい、じゃあ次わたしね」
そう言ってドレッドヘア女は勢い良く立ち上がった。
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