ヤクザの様な人

 パーマ男がぼんちゃんの店員に、予約している部屋の場所を聞き、その襖を思いっきり開けた。


「じゃーん、どうせ参加者なんて誰も……あっ! ごめんなさ……」


 男の顔が青ざめた。そのまま襖を閉め、血相を変えて戻って来た。


「あれ? 兄ちゃんどうしたの?」

「やべっ! 部屋間違えた、ヤクザの部屋入っちまった。なんか斬り込み隊長みたいのが座ってた」

「ヤクザぁ〜? それやばくない? 明日から横断歩道の一番前に立たない方がいいよ。んでどこ? あたしたちん場所は」


 先生が、にゅっ、と横から前に出た。


「ここで合ってますよ、失礼……」

「あっ、先生! だからそこは……あぁオワタ……」


 先生は先ほどパーマ男が入った部屋に飛び込んだ。

 そしてしばらくしてから、こちらを見る。


「さあ、そこで何してるんですか。早く中へどうぞ」


 皆顔を見合わせた。

 それから恐る恐る中に入る。

 一番最初に入ったのは佑紀乃だった。というのも、背中をしっかりとパーマ男にガードされ、逃げられなかったのが原因であるが。

 部屋には10人程度の料理が用意してあった。

 しかし、それよりも何よりもまず目に入った者があった。


——いた! あの人だ……


 まるでヤクザ映画の、チャラリー、チャラリーの音楽が聞こえてきそうだった。

 その男はスキンヘッドで眉毛はうすい。目尻は尖っておりまるで目の前の誰かを睨み殺す様に座っていた。

 ぎらり、とこちらを見た。思わず目が合う。


「……あ、すみません、ここ小説講座の懇親会って言われて来ただけなんです。あの……お邪魔だったらすみません、今すぐここから……」


 必死で謝る佑紀乃に、先生がその肩を叩いた。


「何言ってるんですか、葛城さん。彼も生徒ですよ、さっき同じ部屋にいたのに気づかなかったんですか?」

「へ? 生徒? すみません、てっきりあっち系の人かと」

「まあ、あっち系の人じゃないとは言っていませんけどね、さあ皆さん入ってください」


 みんな席についた。

 配置としては、スキンヘッドが隅。流れでその向かいに先生、横に佑紀乃が座らされた。実際はそれ以外の席はみんなにそそくさと取られてしまっていたにすぎないのだが。


「さあこれでみんな揃いましたかね、早速自己紹介から行きましょうか!」


 先生はにこにこと眼鏡を光らせた。

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