懇親会に参加する人は一人もいなかった
結局佑紀乃は最後まで講義を聞いた。
内容は主語と述語について。接続詞について、修飾語について。「ら」抜き言葉に注意、敬語について……。
講義が終了するまで、料理の「り」の字も出てこなかった。敢えて近い言葉といったら「オノマトペ」がひょっとしたら料理の名前かもしれないと期待したが、どうやら違っていたようだ。
「みなさん、お疲れ様でした! これから3か月間、よろしくお願いしますね。早速なんですが、この後懇親会を設定しています。場所は駅前の『ぼんちゃん』10人で予約しましたので、是非みなさん参加してください。詳しい地図を今から書きますね……」
そう言いながら、ニコニコと懇親会の場所を黒板に書く先生をよそに、生徒の皆は黙って部屋を出て行った。時刻はすでに21時を過ぎている。
佑紀乃のお腹が、くぅと鳴った。
それもそのはず、昼食後何も口にしていない。料理教室の具材をつまみ食いして空腹を凌ごう思っていたからだ。
「それではみなさん、あれ?」
先生が黒板から振り返ったとき、生徒は佑紀乃一人だった。
「あぁ、あなたは最後に入ってこられた生徒ですね。懇親会参加されますか?」
佑紀乃は思った。
——いやいや、小説なんて興味ないし、しかもよく分からない初めて会ったこの先生とマンツーマンはさすがにきつい。でも私が行かなかったらひょっとして、参加者ゼロ? 自分を守るか、このかわいそうなおじさんに同情するか。どうしよう……。
佑紀乃の目が鋭く光った。喉元がごくりと鳴った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます