第7話 神のみぞ知る
『警告! 警告! エネルギーを消費しました。速やかにエネルギーを補給して下さい』
戦ってもエネルギーを消費するのか?
そんな警告を他所にアリスから声が掛かる。
「──信じられませんが貴方がこの空の遥か先から来たとしましょう。ですがそれはなぜでしょうか?」
彼女は先ほど鞘に戻した剣の柄に両手を添えながら、そう口にした。
(この世界は箱庭の一つ、なんて話を信じてもらえるはずもないか……)
「気が付いたら空の先から落ちてた、ただ、それだけだ。だから、理由はこれから見つける」
この世界を知るっていう名目はあるにせよ、聞いてはもらえないだろう。
カチャリ──剣が一瞬、鳴った。わざとなのか、それとも純粋な反応なのかはわからない。
「……もしそれが本当なら、なぜ仮面をつけているのでしょう。それが信用ならない点の一つです」
「見せる必要が無いからだ」
「なっ! それなら、私の顔も見ないで下さいっ!」
それっきり彼女は横を向いてしまった。
『通知! 通知! エネルギーの補給源があります。補給して下さい』
彼女の横顔を見ていると突如として頭に文字が浮かぶ。また、ペンダントからのお知らせが来たようだ。
(エネルギー源なんて見当たらないぞ? どこだ?)
見回してもそんなものは無い。
『その棒貨──エネルギー源ではないでしょうか?』
『……なるほど。だがどうやって補充するんだ?』
ポケットからペンダントを出してみる。
「えっ? 何故貴方がそれを!?」
思いも寄らない所から声が聞こえる。
「でも、偽物かもしれない……」
「これが何なのか知っているのか?」
「はい──神の涙。若しくは使徒の石と呼ばれています。おとぎ話に出てくるような物です」
「何故、それだと分かる? 見たことあるのか?」
「何故でしょうね? ですが見たら分かります。そしておとぎ話の通りなら──」
そう言って彼女は俺が持ってるペンダントに手を伸ばす。次の瞬間、彼女の手の平と俺の手の平が重なる。まるでペンダントなんてそこに存在していないかのように。
「っ! ──信じたくはありませんが……」
彼女の体温が伝わってくる。
「どうやら本物のようですね」
「何故、アリスは触れないんだ?」
「アリスさん」
「……」
「キチンと敬意を払って頂かないと」
ニコニコとこちらを見ている。互いの手の平はくっついたままだ。
『大人気ないですね』
『あぁ、全くだ』
『いえ、彼女では無く貴方がですが』
『……』
「アリスさん」
「はい、何でしょう?」
花が咲いた瞬間とは今、正にこの時の事を言うのだろう。パッと空間が華やぐ。
「そのペンダントに触れられない理由は?」
「神のみぞ知る──です」
えっへん──そんな効果音が聞こえて来そうな素振りで彼女はそう答えた。
「聞いた俺が間違ってた」
俺は手の平を引っ込め、踵を返した途端、慌てて彼女は俺の手を両手で掴んだ。
「最後迄聞いて下さいっ!」
「……」
「……神に認められた者のみが触ることが出来ると聞いてます。何故貴方が、というのは神さまだけが知ってる世界の約束事のような物なのです」
「神さまねぇ」
この世界は一体何なのだろう。この箱庭の世界、円盤の世界を作ったやつが居る。それは間違い無い。しかし、このペンダントはその世界の外から持ち込んだ物だ。その存在を何故、彼女等が知っているのか。いまいち話が繋がらない。
そうしている間にも、頭にはペンダントからのお知らせが絶えず来ていた。
「その神の汁がエネルギー不足とか言ってるんだが何か知ってるか?」
「神の涙ですね。それ、ワザとやってますよね」
「……」
「そもそも、『エネルギー』ってそもそもどういう意味なのでしょうか?」
そう質問された俺は項垂れてしまう。そこから説明が要るのか……。
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