エピローグ






   エピローグ





 「すごかったねー!マドリードの宮殿も、試合会場も!あんなに大きなところで秋文がプレイヤーしていたなんて………すごいなー。」

 「おまえの目、キラキラしてたもんな。そんなによかったか?」

 「うん!コルドバのメスキータも素敵だったし……。すごい綺麗な街ばかりだね。」

 「それはよかっな。」


 秋文は自分が褒められたかのように、嬉しそうに笑いながら、興奮気味で話す千春を見つめていた。



 


 秋文がトラブルに巻き込まれた後。

 彼は、普段通りに練習をして試合にも参加していた。

 千春もすぐに自宅に戻った。始めの方は、報道陣が自宅前にいることもあり、千春が質問されることがあったけれど、千春は「彼を信じています。応援してあげてください。」と言うようにして、堂々と過ごしていた。


 千春自身「強くなったなぁ。」と感じていたけれど、彼とこれからも一緒に暮らしていくのならば、これぐらいの度胸は必要だとわかったのだ。


 

 そして、秋文は約束通りに結果を出した。


 秋文の所属チームは優勝、秋文は今年のMVP選手に選ばれた。

 そして、日本代表は歴代最高順位で試合を締めくくった。偉業達成に世間では大盛り上がりしていたけれど、秋文だけは「まだ上に行けた。」と、納得はしていないようだった。



 千春は最後の試合や決勝戦などでは号泣してしまっていた。けれど、隣の立夏や周りのサポーターも皆泣いていたので、「みんな、秋文の事を応援してくれたんだ。」と感じられて、更に泣いてしまった。


 けれど、秋文は最後までとても爽やかにそして、堂々としていた。

 引退のセレモニーでも、どれだけサッカーが好きなのかを笑顔で話した。


 「とても楽しいサッカー人生でした。いや、死ぬまでサッカーを好きで生きていきます。………今まで、応援ありがとうございました。俺についてきてくれた皆、感謝してる。」



 秋文らしい言葉と共に、秋文はグランドから去ったのだった。






 それが、まずか半月前の事だった。

 千春には、昨日の事のように思い出されていた。

 そして、今は念願の新婚旅行に来ていた。

 千春がずっと行ってみたいと願っていた、スペインにいるのだ。



 スペインのチームに挨拶にいき、秋文がお世話になった監督にも会ってきた。

 「引退するのは早すぎる。日本のチーム辞めてきたのなら、ここでプレイしろ。」と誘われて、秋文は苦笑していた。



 その後は、秋文が通った店や住んでいた部屋、そしてスペイン観光をして楽しんでいた。


 スペイン語を話す彼を「かっこいいな。」と見つめたり、街の人々に声を掛けられて「戻ってきなさい!応援してるわよ。もちろん、奥さんと一緒に!」などと、千春も一緒に歓迎されたりと、歩くだけで笑顔になれる街だった。

 地元での彼の人気をみると、千春も嬉しくなってしまう。



 「秋文は、みんなに好かれているんだね。私も何だか鼻が高いよ。」

 「何でおまえが嬉しがるんだよ。」

 「秋文の奥さんだからね。」



 千春は、ホテルの窓辺に座り、スペインの町並みを眺めながら、そう彼に言う。

 千春が見つめてる先には、白い宮殿のような優雅で美しい建物。そして、赤茶色の屋根が並ぶおしゃれな煉瓦作りの街並み。

 どこを見ても、千春が見慣れない景色だった。けれども、それがとても新鮮で、千春は毎日がとても充実してした。



 「秋文が見てきた景色を見られて、すごく嬉しいな。ここには、私の知らない秋文の過去があるから。……そこに仲間入り出来て嬉しいんだ。」

 「………じゃあ、俺もアメリカに行きたいな。」

 「え?」



 急な言葉に、千春は驚いた顔で彼に視線を向ける。すると、彼らしいニヤリとした微笑みとともに、ゆっくりと千春の横に立った。

 そして、千春の腰を引いて自分に引き寄せる。それを千春も喜び、彼の肩に頭をコツンと乗せる。


 「俺が見れなかった千春を見たい。だから、この次はアメリカに行こう。」

 「……そうだね。次の夢が出来たね。」

 「あぁ………家族が増える前に行こう。」

 「え…………。」

 「そろそろ子どもも欲しいからな。早くアメリカに行かないとな。」

 「そう、だね………。」



 思いもよらない彼の言葉。

 秋文の思いと、千春も同じだった。

 いつか、彼と一緒に家族をつくり、穏やかにそして、明るく過ごしたいと願っていた。



 千春は、嬉しさのあまり瞳から次々の涙が溢れた。それを秋文が拭いながら、「次にスペインに来る時は、3人になってるといいな。」と笑った。


 千春は感動のあまり、言葉にならず、コクコクと頭を動かして返事をした。

 するの、秋文は「泣くなよ。」と微笑み、そして、千春の唇に小さくキスをした。



 

 まだ見ぬ新しい家族には、パパがどんなにかっこいいのかを伝えよう。



 強気で俺様だけれど、誰よりもかっこいい、ママの大好きな人なのだと。





                (おしまい)

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強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛旦那様になりました(番外編) 蝶野ともえ @chounotomoe

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