トラップ大統領の永久なるつぶやき
トラップ大統領……第69代アメリカ合衆国大統領。数々のビジネスを展開する大富豪である彼は、選挙活動期間中からネットを利用した活動を展開しており、大方の予想に反して見事大統領に就任。発言はブレブレだが、ネット上での活動を主軸にしていることは一貫している。
一番注目を集めるのは、ツイッターでのつぶやきだろうか。
「メキシコに壁を作る!」
「移民は犯罪者だ!」
などなどの発言は、内外から様々な批判や賞賛を浴び、大量の<いいね><RT>の数をたたき出した。
「フヒヒ……」
演説会場へ向かうリムジンの中で、薄気味悪い笑みを浮かべながら一心不乱にスマホを突いているのは、他ならぬトラップ大統領本人である。
こいつの今の笑顔、ツイッターに流したらどうなるんやろ……
隣に座っているメラミア夫人はなぜか大阪弁で漠然とそう思った。
いつ頃だろうか、夫がSNSにはまり込んでしまったのは……?
思い返せば、大統領になる前後からだったような気がする。
ツイッターで良くも悪くも注目を集めた。
結果的に、大統領になれた。
一般人なら「SNSなんて何の意味もないから、いい加減にしてよ!」と言えるのだが、一応はツイートで大統領になったのである。ツイートすることで実益を得られるのだから、「止めろ」とは簡単に言えないのが頭の痛いところである。
「なぁ」
とトラップ大統領が誰に言ってるのか分からない声を出した。だから秘書もメラミアも、誰も何も答えなかった。
「どうやったら、もっとRTされるやろ?」
知らんがな、そんなもん!
と心の中で秘書とメラミアが同時に言ったが、心の中なのでそれを知るのは神のみである。馬鹿らしい質問だが、先に答えたのはメラミアだった。
「じゃあ、核ミサイル打ち込むとかつぶやけば?」
「う~ん……さすがにそれはなぁ……」
もちろん、メラミアは本気でこんなことを言っているのではない。無理難題を吹っ掛けて、最終的に止めてくれるように仕向けているのだ。政治家がこんなみじめな姿を晒したら、それこそ支持率が急落するだろう。
「でもなぁ~、ちょっと呟いてみるか」
「「え?!」」
今度は秘書とメラミアが同時に声を上げた。マジでやっちゃうのかな……?
「いやいや、それはちょっとまずいですよ、大統領」
秘書が必死になって止めようとする。
「さすがにそれはツイッターの枠を超えちゃうと言うか……国際社会的にも叩かれますって」
「だからRTされやすいっしょ?」
全く悪びれずに言うトラップ大統領。目線はスマホの画面から一切動かさない。何が彼をそこまでツイッターの画面につなぎとめるのだろう? エロ画像か?
メラミアは体を少し乗り出してトラップのスマホ画面をみたが、そこにはオバム元大統領のツイッターが写っていた。
(もうルイジアナの件は許したれよ……)
またもや秘書と心の中でハモった。
「とにかく、核ミサイルはまずいですって!」
「え~、先っぽだけなら大丈夫っしょ?」
「大丈夫じゃないでしょ」とメラミア夫人が冷たい声で答えた。トラップ大統領の不倫騒動をまだに根に持っているのだ。
「え~、でも一発だけなら誤射って言うし……」
「それはジャップランドだけの話ですよ、世界の常識で考えてください、大統領!」
「大統領なっても、RTされたいんや……」
メラミアと秘書が同時にため息をついた。秘書もメラミアも、何か言おうとした。しかし、その時点でちょうどリムジンは目的地に到着、扉が開くと屈強なSPたちに護送されながら、支持者――というか信者の待つ場所へ向かっていった。むろん、メラミアもささいな不安をいったん忘れ、大統領夫人として夫の後についていった。
演説は、またしても拍手喝采で締めくくられた。不安な時代、先行きの分からない時代だからこそ、トラップ大統領の自信に満ちた断言調の演説はウケたのだ。
メラミア夫人も、湧き上がる群衆に手を振る。所詮は供え物の華に過ぎない自分だが、それでもある程度の満足感はあった。
これで十分じゃない。
そうメラミアは思った。
ツイッターの100万人のフォロワーより、現実の支持者のほうがよほど大切。
手を振りながら、メラミアはその思いを強くした。
まただ……家に帰ってから、トラップはずっとスマホを触っていた。風呂に入るときも、風呂用の防水スマホをもって風呂に入っていく。
そこまでツイートしたいの……?
さすがのメラミア夫人もこれには困惑を禁じ得ない。
<へぼ政治家、嫁よりスマホをかわいがり>
そんな言葉が頭の中を通り過ぎた。
もちろん、食事中もずっとトラップはスマホを突いている。
さすがにメラミア夫人も我慢の限界だった。
「ねえ、久々の家族揃っての食事なんだし……」
「あぁ、うん、これつぶやいたら……」
全く聞く耳を持たない……ちょっと前までこんなことなかったのに……
「パパ〜、ポケモン欲しいよ〜!」
息子のボロンがねだりだした。
「そうかそうか、じゃあ真部にでも言って買わせるか」
早速その様子をツイートしていく夫に、もはや注意する気も失せてきたメラミア夫人だった……
はぁ……
ため息だけが漏れる。高級なはずの食事もイマイチな味に感じられた。
そしてやってきました、G20会合。世界の主要国の首脳が集まって、観光のついでに会議っぽいことをやってドヤ顔で集合写真を取るのが目的の国際会合である。主に経済について話し合われるようだ。
真部首相は、トラップ首相を案内していた。
「ディス イズ オクトパスボール!」
真部のひどい英語には我慢ならないが、オクトパスボールは気に入った。
まずは写真を取る。もちろん、真部と一緒に横に並んで、真ん中にオクトパスボールの皿を二人で持った状態で、だ。米ジャップ友好を宣伝する目的ではあるが、トラップ大統領は割と純粋に遊んでいた。そりゃそうだろう、どこぞの言葉も通じないおっさんと一緒にこんなことやってるのは、冷静に考えれば馬鹿らしい。ちょっとは遊ばないと、やってられないのだ。
もちろん、写真はツイッターに即投稿する。
早速信者たちから速攻で”いいね”と”RT”の嵐を受ける。
「わぁ〜、おいしそうですね! この調子でG7も頑張ってください!」
「わたしを食べて〜!!!」
「まさかこのたこ焼きもこんな偉い人に囲まれるとは思ってなかっただろうなww」
などなどのコメントも寄せられた。早速コメントを読み返しながら打ち返していくトラップ大統領。その返信にもまた大量の”いいね”と”RT”がつき、そしてまた返信が……の無限ループに陥っているトラップ大統領……
メラミアは(こいつ、帰ったらちょっと病院行かしたほうがええんちゃうか?)と思い始めていた。注意しようかどうか迷ったが、後ろから肘でついて注意してやることにした。だって一応結婚したから……
「ん、なんやねん、今いいところやっちゅうに」
「完全にネイティブなにわ人じゃない……」
「なんか用か? 今忙しいねんから、しょうもないことやったら後にせいや」
おめえの頭をたこ焼きにしてやろうか!? と言いたかったが、そこはこらえた。だって一応結婚したから。この人についていくって決めたから……
「そろそろツイートするのやめて、いい加減ーー
たこ焼きをさっさと食ったほうがいいわよ、冷めたらまずくなるし、これから各国の要人たちと合流するんだし、と言おうと思った矢先、重厚な影が視界を一瞬よぎった。
何事かと思ったのもつかの間、すでにトラップ大統領のオクトパスボールはソースのシミを残して跡形もなく消え去っていた。
「おい、久々にキレちまったよ……」
トラップ大統領はスーパーメリケン人に変身するくらいにキレかかっていた。
目線の先にいたのは、終金平だった。口にソースの跡がついていたが、それをこれみよがしに舌でねっとりと舐め取る。
「はい、とても美味しかったです……」
腹を分厚い手で叩きながら言った。
「てめえはオラを怒らせた……!」
メラミアは(それ、ちょっと変なの混じってるで!)と心の中で突っ込んだが、すでに二人の闘気は火花を散らしていた。その場に会合どころではない空気が漂っていた。
しかし、そこに真部が入り込んできた。
「はいはい、お二人とも、もっと食べたいならいくらでもありますから、どうぞ召し上がってください」
メラミアは(よくこんな場に出てこれるな、空気を読めないのか、よほど勇気があるのか……)といぶかしんだが、真部の後ろに能面のような笑顔を貼り付けた真部夫人を見つけて、だいたい答えが見えてきた。
多分、夫人にせっつかれてやってきたのだろう。世界の超大国二カ国より嫁の方が恐ろしいのか……メラミアはちょっと悲しい気持ちになったが、それも仕方のないことだ、だって一応結婚したんだもんね……そういえばオバムも似たような感じだったっけ……
そんなことを考えていると、メラミアの前にいつの間にか真部が立っていた。
「では、日米中の3カ国の友好を記念いたしましてですね、写真を取りたいと思いますので、メラミア夫人、カメラお願いできるでしょうか?」
もちろん、答えはイエスだった。それくらいしか、やれないしやりたくなかった。
トラップ大統領のiPhoneXプロマックスレボリューションと、集金ぺーのP30プロを受け取ったメラミアは、カメラアプリのボタンを押した。
向かって右にトランプ、左に集金ぺー、真ん中に小さく縮こまった真部がたこ焼きを抱えて立っている写真が撮れた。
早速トラップ大統領は写真をツイッターに投稿、3カ国の友情と友好をアピールしだす。しかし、そこに本当の友情があるのだろうか。集金ペーは限りなく冷たいほほえみだけを残して立ち去っていった。
その後、サミット会場へと移動したトラップ大統領。しかし、会場はなぜかとてつもなく狭く、まさにすし詰め状態だった。寿司は好きでも、寿司にされるのは大っきらいだ! と早速ツイートする。そのツイートがまたしても爆伸びしてしまう。
さて、実際に会議は順調に進んでいった。それは会議などというものではなく、官僚が用意した原稿を読んだり、勝手なことを言ったりしているからだった。
特にトラップ大統領は先のたこ焼きの件を恨みに思ったのか、
「今後中国のスマホに対して追加関税をかける!」などと急に言い出した。さらに言ったそばから高速フリック入力でそれをツイートに投稿しているのを、メラミア夫人は遠目であっても見逃さなかった。もはやしゃべると同時にツイートしているのではないか。よくこんないらない特技を身につけるもんだと感心するメラミア夫人。
当然、集金ペーも黙ってはいない。
「中国でアメリカのネットサービスを使わせない!」
「お前、それ元からだろ!」
思わず突っ込んでしまうトラップ大統領。もちろん、ツイッターで高速フリック入力中継中である。もはやこいつ、書記になったほうがいいんじゃね? とメラミア夫人は見ていて思った。
「大体、北朝鮮はどうなったんだよ!? 俺はとっとと北朝鮮のミサイルボーイをぶっ殺して人道的になりたいんだよ!」
「あ、それなら大丈夫だよ。ミサイルボーイ、ミサイル辞めるってよ」
「え…マジで……?」
「マジだよ」
「どうしてやめちゃうんだよ?」
「もうついていけないってさ」
集金ペーは悲しそうに首を振った。
「だったら、どうすんだよ、ジョーカーがいなけりゃバットマンは成立しないだろ! 俺にはジョーカーが必要だったのに!」
「ええ、皆様、少しお熱くなっておられるようですが、今少し冷静になっていただきたいと思う所存であります」
真部首相が二人をなだめた。
「うっせえよ! 俺のレゾンデートルがかかってるんだよ!」
「ええ、少し熱くなりすぎているようですね」
「まあまあ、ここは私に任せてください」
名乗り出たのは韓国大統領のムンムンムンである。
「もともと韓国と北朝鮮は兄弟のようなもの。彼らも我々のことなら聞いてくれるでしょう。そうだ、一回トラップ大統領が直接話し合って貰えればいいと思うんですけど」
「よし、そうしよう!」
そういうことで、貿易戦争もなんとか戦争も全く解決することなく、ウヤムヤのまま、G20会議は無事終了。トラップ大統領はその足で北朝鮮の元ミサイルボーイの元へと飛んでいった。この階段は「男同士、膝と腹を割って話し合う」ということのようで、メラミアと子どもたちはエアフォースワンでアメリカ本国へ帰っていった。
帰りの飛行機の中……
「はぁ〜〜〜〜〜〜…………」
メラミア夫人は大きなため息をついた。こういう国際会合はただでさえ疲れるものだ。しかし今回はそれに夫のひどいツイッター中毒の有様も加わっている。
あの状態で、果たして政務ができるのか……
メラミアは政治家ではないが、なんとなくわかっていた。そもそも、自分ならあのような状態の人間に票を入れようとは思わないだろう。最後の方はあまりのフリック入力の速さにiPhoneの画面から煙が出ていたが、大丈夫だったのだろうか……
ピロン!
早速きた……! メラミアは自らのiPhoneを取り出すと、トラップ大統領のツイートを確認した。
そこには笑顔で握手し合うミサイルボーイ(復帰)とトラップの姿があった。
「ミサイルボーイ、ミサイル再開するってよ!」
はぁ〜〜………
画面の中の楽しそうな姿に、もう一度深いため息が出た。画面の中の笑顔を、家族に見せたことなんてあっただろうか。ツイッターの中だけはずいぶん立派な大統領ですこと……
そう心の中で皮肉を返すことしかできないメラミア夫人であった……
家に帰ってきたトラップ大統領を迎えたのは、息子のボロンだった。
「ねえ、ポケモンは?!」
トラップはしまった、という顔をした。
「すまん、忘れてもうたんや……」
「えぇーーーーーーー?!」
ボロンが半なきで絶叫する。
「真部からもらってくるっていってたじゃんかーーー!!」
「そんなの、アマゾンで買えばいいでしょ」とメラミアがなだめる。
ていうか、夫はいつまで大阪弁なんだ……?
「そんなの、やだよ! 真部からもらったやつがいいの!」
メラミアもほとほと困り果てた。
「大丈夫、パパはアメリカ大統領だ、なんとかしてやるよ!」
「本当に? 忘れてたくせに」
「人間だからね、忘れることはあるさ。でも今度はもう忘れない」
スマホを取り出すと、早速ツイッターでダイレクトメッセージを真部に送るトラップ父さん。
”子供が欲しがってるから、ポケモンの最新作を送ってくれ。ちなみに英語版な”
真部は「だったらアマゾンで買えよ……と思ったりしたが、一応アメリカは大事な国である。会合が終わってからもこんなしょうもないことをやらされるのか、という気持ちもあるが、逆にこれをアピールして友好を演出すれば、ポケモンも無駄ではあるまい。そのような計算を一瞬のうちに行うと、真部はすぐさま、
”いいですよ。ぜひご家族でお楽しみください!”
と返信。
むろん、トラップ大統領のパパっぷりはツイートされることになる。
さすがに今回の件はトラップ大統領も少し申し訳なく思ったのか、
”親愛なる真部首相には、ぜひお返しのサプライズを提供したい”
などと、珍しいツイートをしたりした。
メラミアも、あの人にしては珍しく友好的だし、ツイッター依存症はともかく、どうせカリフォルニア巻とか送るんだろうな、と漠然とした考えを抱いていたし、それも日々の雑務の中へ埋もれていった。
地球最後の日の始まり……それはジャップランドを襲った巨大台風に、大量の核兵器が投下されたことから始まった。
世界中がトラップ大統領の「サプライズ」に文字通りサプライズさせられた。
なぜトラップ大統領は核兵器使用に踏み切ったのだろうか? 真部のオモテナシが悪かったのだろうか?
そうではなく、これはトラップ流の”返礼”であった。
トラップ大統領は、ジャップランドでは台風がよく来る、という話をなんとなく知っていた。だから、台風を核兵器で吹き飛ばして、ジャップランドを台風の災害から救ってあげようと思ったのだ。
彼はポケモンの返礼として最高だと考えていた。これで死ぬかもしれなった人たちが救われる――はずもあるわけなかった。
大量の放射性物質によって、逆に地球の北半球はあっという間に汚染。アメリカやトラップ大統領の責任を問う声が国際的に相次いだ。
とくに真部の怒りは当然だった。せっかく友好国ということでオモテナシしたのに、その返礼がこれではあまりにも酷い、というものだった。
真部のツイートを見たトラップはむしろ怒り心頭。
「イエローモンキーがうっせえんだよ! 俺がせっかく台風消してやったんだから、逆らうなら本土に核攻撃すっぞ?」
と言いながらそれも高速フリック入力でツイート。
実際には、台風は核爆発で消滅するどころか、爆風と台風が合わさって最強の台風が完成、コリオリの力によってジャップ列島を斜めに横断しながら雷雨と放射性物質をばらまいていたのだった。北上してアラスカの一部をかすめながら北極に達しても消えなかった台風は、そのままヨーロッパに回り込んで、アフリカ北部にまで到達、ようやくその長い人生を終えた。
トラップのツイートの直後、すぐにリプライが来た。それは例のミサイルボーイからだった。
「俺らが代わりにジャップランドに核攻撃しときました!」
核台風のばらまいた放射性物質は、当然一部はアメリカ国土にまで届いた。世界中にばらまかれた放射物質によって、米中核戦争が引き起こされることになった。アメリカの失墜をみて、インド、パキスタンも核戦争を開始、さらにロシアは中国とも核戦争を開始。
トラップ大統領も、さすがにこのままでは命が危ないということで、核シェルターに移されることになった。
むろん、メラミアも一緒に、命からがらシェルターに逃げ込んだ。
しかし、やっとシェルターに乗り込んだというのに、トラップ大統領はまだiPhone(これを作っている工場も今では核の灰に埋もれているのだろう)を自分の一物のようにいじっていた。メラミア夫人の中に、強烈な怒りが湧いてきた。こいつの軽いツイッターのノリで政治をしたせいで、自分は最悪の大統領のファーストレディ、つまり最悪のファーストレディになってしまったのだ。
「もういい加減にしてよ!」
トラップ大統領(彼の心の中に、きっと合衆国はある)の手から、iPhoneが弾き飛ばされる。
”我々アメリカは諦めない、必ず復興する! トラスト・ミー!”
そのツイートには、相変わらず大量の”いいね”と”RT”が各々数十万ついていた。桁が多くて一瞬では見えなかったが、今ではそんなことはどうでも良かった……
いや、どうでも良くなかった。地上では、もはやツイッターなどやっている場合ではない状態だ。ほとんどのアメリカ国民は死に絶えている。それでもこれだけのいいね、RTがつくということは……
メラミアはかつてBOTという存在を聞いたことがあった。それでは勝手につぶやいたり、またいいねやRTを自動で行ってくれるものもあるそうだ。
ということは……
トラップ大統領は、iPhoneを拾い上げると、一心不乱にツイートをし始めた。
メラミア夫人は、トラップ大統領を核シェルターに残していくことにした。おそらく、シェルターの電気か食料が尽きるその日まで、虚空に向かってトラップは大統領としてツイートし続けるだろう。そして虚空から返ってくる”いいね”と”RT”を得るだろう。
正式には、もはやトラップは大統領ではない。すでにその任に耐えない、ということで解任されている。
主要な閣僚たちは、シェルターの中で核の残り火が燃え尽きるのを待ってから、国土の復興に取り組むようだ。恐らく絶望的だろう。
地球をもはや諦めたものは、系外惑星移民船に乗って、地球を脱出することにした。メラミアも、脱出組だった。一刻も早く、この星から、あの人から、あの人のツイートから逃れたかった。
冷凍カプセルの中へ入ると、低音と闇が彼女たちを包み込み……
ようやく静寂が訪れた。
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