第三話 兄妹の固有スキル①
あの後、鉄巨人の一部を持ち帰り、ギルドのリーアの元へと。
心配してくれていたみたいなので、俺は礼を言うと証拠品を手渡す。
すると、55000ギール。大金貨5と小金貨5を手渡され、
そのまま、二階の空き部屋を気前良く貸し与えてくれた。
厚意に感謝しつつ、二人して入るのだが、相部屋なんだよなぁ。
風呂も中にあって、クルナが今、使用中。
俺は、木製のベッドに固い煎餅のようなフトンに寝転がっている。
仰向けになり、今後の事を考えている。
当面は魔王の残党狩りとやらをして、マコトを探す。
これ以外にないんだよな。
下手をすれば海を越えた先の大陸。魔王の居た城にいるという線もある。
だとすれば、中々に骨の折れる話だ。
などと、現状どうしようもない事を考えていると、
クルナが風呂から出てきたようで、真っ白のぶかぶかな服を着て出てきた。
いいお湯だったようで、クルナから湯気が出ている。
ちらりと見て、再び視線を天井に。向けていたのだが、向かいのベッドで
座り込んで俺を見ているクルナの視線が気になる。
「クルナ、どうかしたのか?」
「…んー。シノブお兄様の固有スキルが、きになるですぞ?」
「俺にそんなもんあんの?」
その言葉にクルナに視線を向けると、はぁ!? という顔をしている。
彼女いわく、元居た世界でいう義務教育の一環のようなものらしい。
それを調べて、適材適所をみつけるようだ。
そして、魔術師はそれを調べる術があるらしく、折角なので、見て貰う事に。
「なぁクルナ」
「なんですぞ? シノブお兄様」
「近すぎない?」
少しでも動けば口と口がくっつきそうな超至近距離。
じっと俺の瞳を覗き込むが、スキル診断を阻むように脳内に声が響く。
「やぁやぁ、ラクラスに住まう人間達。
私はヴィザハール。魔王側近の一人ではあるが…。
あの少女に主がやられた事により、新たな主の僕となった者だ」
…は? こんな夜になんだこれは。
スキルの確認をしてもらっていたが、慌てて少し離れた場所で
キョロキョロと周囲を見回すが、どこから?
「まぁ、自己紹介は終わりにして…君達。
魔王の残党狩りをしているようだね。
ならばこの私も対象…こちらから出向いた次第である」
向こうから来るかよ…。クルナと顔を見合わせるが、
現状向こうの事を何も知らない俺はは、ただ困惑する。
クルナは彼の声を真剣にジッと聞いているようだ。
「今夜はまぁ、挨拶だけだ安心したまえ。
だが、このヴィザハールを討ち取ろう。
その気概のある者達は、南門を出た所で私は
ティータイムしているので、来ると良い」
街の外で…お茶飲んでるから、倒したければ来いってか。
余程、強さに自信があるのか…。一度窓まで歩いていき、
外を見ると、多くの冒険者が
様々な武器を手に南へと走っていく。
再び、室内へと視線を戻すと、いそいそと着替えているクルナ…。
「あー…」
「急ぐですぞ、急ぐで…あーっ!!!」
真っ白のパンツに何やら果物の柄。小さくて可愛らしいお尻がモロだ。
さて、見てはいけないものを見てしまった。
クルナがスカートを掴んで、いままさに穿き終えようとしていた状態で停止。
「ああああああああああ…あっち向くですぞ!!」
「お、おお。まぁ妹ので見慣れてるから問題なし」
どうだ、完璧なフォローだ。これ以上無い程の。
なのにベッドのシーツを投げつけられ視界が真っ白けに。
「ボクもこれでもレディーなのですぞ!?」
「はい、すみません」
シーツお化けのまま手探りで部屋を先に出て、着替えを待ち、
俺達も取り合えずヴィザハールという悪魔だろうそれを見に行く事に。
然程に時間もかからず南門へと辿り着いたが、既に人が溢れかえっていて
前が余り見えない。俺で見えないならクルナは尚更である。
何とか人混みをかき分けて先頭付近に辿り着くと、白髪オールバックの痩身。
襟の長いシャツに黒のスーツを着た男が、南門から少し離れた所におかれた
休憩用のテーブルに座り、優雅に茶をしばいていた。
良く見ると既に20数人程が、彼の足元で倒れこんでいる。
呻き声をあげて苦しんではいるが、死んではなさそうだ。
「腕に自信あり。それでこの程度ですか、情けない。
それではそろそろ頃合でしょうか」
彼はテーブルにティーカップを置いて、コチラをみやる。
そして、右の掌をこちらに向け、指を四本立てた。
「大した価値もなさそうなので、
四日後、この街を蹂躙、破壊します」
ざわ…と、周囲がどよめき、絶望を各々が口にしている。
…然し、自分から魔王の側近を名乗り、そして新しい主…。
ミステアとマコトの行方を知ってそうだな。
「クルナ、もし俺が彼を怒らせてしまったら、
コイツで皆を護ってやってくれ」
「な、何する気ですぞ? やめるで…わわわ」
問答無用で刀を押しつけ、俺はヴィザハールの元へと歩いていく。
背後に様々な視線がぶつけられるが、一つ。
確信とも言える事。彼が余りに紳士的に見えた。
ならば敵意を見せなければ…情報だけ得られるかも…と。
そう思い、クルナの制止も聞かず、彼の方へと歩いていった。
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