才無き強者④

  ごめんなさいすみません。女の子泣かせてしまいました。

   いやだって、普通…怒るよね? 俺がオカシイのか!? 


    「うにゃぁぁああっ!!…魔術師になりたいのですあぁぁぁあっ!!」


  草原に四つん這いになってギャン泣きするクルナ。

   何とか、うん、慰めようとするのだけど、判らない。


   俺が間違ってると思えないから、慰め方が判らない!!!


    「ほ、ほら、この刀あげるからほら、泣き止んで?」

    「魔法がいいのですぞぉぁぁぁああああああっ!!!」


  うーわー。手に負えない。 と、取り合えず理由から掘り出さないと

   どうにもだなこりゃ。


  腰袋から携帯用のカップを取り出し、水をカップに入れて、

   ギャンギャン泣き喚くクルナの横に置いて座る。


    「あー…悪かった。俺が言い過ぎた。謝る。

      だから、魔術師に拘る理由教えてくれたりするか?」


  そう言うと、またひでぇ泣きっ面でこちらを見ると、

   座り込み、横に置いたカップを手に取り、水を飲んだ。


    「ワタクシの――」

    「あ、それと、ワタクシとか似合わなさ過ぎるぞ。調整中だろ」

    「う゛…。ならばボクの――」

    「今度はそっちに走るかお前。まぁいいか。で、続きは?」


  最終的にどんな口調で固まるやらなクルナが、

   自分の故郷の事を語りだす。


  このロークアーク大陸最北にある小さな村。ノアド。

   かつて、伝説級の大魔術師を世界へ送り出した村らしい。

  小さいながらも魔法研究が盛んで、今も尚、

   優秀な魔術師を世に送り出している。

  そんなノアドで生まれ、固有スキルを調べて貰った時だ、

   彼女はその村における存在意義を完全否定された。


       固有スキル 剣聖


   世界のありとあらゆる剣と対話し、剣に宿る戦いの記憶を

    自身の体に再現させる。加えて剣に対しての適正が高く、

    身体能力・反射神経・動体視力も常人のソレを遥かに超える。

   これを宿す者は、生まれもって英雄となるべく生まれるのだ。


  そんな凶悪スキルがクルナにとっては不必要なものであり、

   故郷では役立たずの烙印を押され、見返す為に旅に出た、らしい。


  …。故郷の風習というかソレに近いモノから遠く外れたのか。

   それでも故郷が恋しく、見返したいから大成する為に…。


  軽く、俺は彼女の小さな肩を叩き、一つ、元気づけた。


    「なら、これはどうなんだろうな」

    「なんですの?」

  「おま、また口調が…。まぁいい。魔法剣士とかどうよ」

    「いやですの」


   頑固だな!!! ま、まぁ。うん、取り合えず魔法がプスンと煙出す理由。

    それを見つける所からだよなぁ。

   そう、思いつつクルナを横目で見ていると、先程のファイヤーボールを

     詠唱し終わっていた。


    「…ファイヤーボール」


   翳した右手に火の渦が収束し、

    火球となり、それが崩れ落ちた鉄巨人へと着弾。


     どごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!


   という轟音と共に、大爆発を巻き起こす。…おいなんでだよ。


    「ね? 出来るのですよ?」

    「ナンデカナー」


   もう、何かこの子が色々ワケわからない。

    そんなこんな、俺達は初のクエストを完了する運びとなった。


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