魔王蹂躙③

コロシアムというだけあり、円形闘技場の形をしていた。

  もっとも空中から見ているわけでもないし、多分そうだろうというレベル。


 そんな場所で、登録を済ませた妹があろうことか、百戦錬磨の絶対王者。

  現コロシアムの主に挑戦する運びとなった。


 心配は心配なのだが、別の意味で心配なのだ。

  俺達は今、ライトノベルなどによくある展開に何故か巻き込まれている。

  その手の話には『チート』なるものがセットのような感じなのだ。


 それらを考えて現状の妹を見ると『魔術系チート』を手に入れてる

  かも知れない。


 既にエントリーを済ませた妹が、闘技場の中央を歩いている。

  観客の人々が驚きを口にするのも仕方ない。

  服装以外は普通の女の子なのだ。


  「いえーい!!」


 どよめきを歓声と勘違いした妹が観客に向けて手を振る。

  いやこの視線の中であんな事できるのか。その胆力たるや…。


 そして、続いて絶対王者のご登場となるが、

  かなりご機嫌斜めな様子。歩き方から苛立ちを感じられ、

  筋骨逞しい体でマコトに近づいて、右手で追い払う素振りを見せる。


 子供が来る場所じゃない。そう言いたいのだろう。

  然し、右手を相手に翳したマコトの返事はこうだった。


  

    《フレイム・ブラスト》


 それを口にした瞬間、渦巻く灼熱の閃光が妹の右手から放たれた。


  「あぢゃぁあぁえぁへあぁうぇああっ!!!!」


 問答無用というか、詠唱は? まさか詠唱破棄?

  慌てて隣に居たミステアを見ると、クスクスと笑っている。

 

  「アンタまさか、詠唱破棄とか教えなかった?」

  「んー? いやぁ…ホントに使えるとは思えなかったけどね?

    あれはサイレントキャストというスキルよ」


 サイレントキャスト。脳内で詠唱し、魔術を放つスキルらしい。

  端から見たらいきなり魔術ぶちかましてるように見える。


 うわ~…と言う顔をして、見事に真っ黒焦げになった絶対王者。


  「あ゛ーっ!!…あーっ!! ああえああぅあああへっ!!!!!」


 転がりまわって悶えているので、まぁ大丈夫だろうか。

  医療班らしき人達が、彼をタンカに乗せて運んでいく。


 …。その余りの出来事に周囲は静まり返るが、堰を切ったように

  歓声があがる。

 五年もの長い間居座り続けた為、皆、げんなりしていたのか、

  新しい王者…いや、女王か?まぁ、歓迎しているようだ。


  然しながら開始の合図が鳴っていなく、無効試合となる。


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