魔王蹂躙②

古ぼけた木造の家に招かれ、俺達は中へと入る。

  眼に入るのは怪しげな液体が入ったビンやら、

  壁にかけられた大きな鎌である。

 中央にはテーブルと椅子があり、そこでくつろいでて、と言われ

  二人揃って着席し、周囲を見ている。


  「何か色々あるねー?」

  「あんま変なもん触るなよマコト…」


 彼女がティーセットだろうそれを持ってきて、テーブルに置き、

  対面へと座と、長い赤髪を左手でサラリと触れる。


  「さて、私はミステアと名乗っている者だけど。

    そうね、貴方達には明かしておこうかしら」

  「あ、俺は忍。樋渡 忍ひわたし しのぶと言います。

    こっちは、妹の信まことです」



 こちらの挨拶に微笑むと、ミステアは一際大きな尖がり帽子を取る。

  すると、普通、人には無いそれが側頭部の両脇についていた。


  「わー! すご。 角はえてるんだ羊っぽいね?」

  「おいおい。羊じゃなくてヤギじゃね…?」

  

 俺達の軽いボケツッコミを見て、ミステアが大きな胸を押し上げるように

  両腕を組んで軽く笑う。


  「くく…あははは。悪魔族を見て驚かないとは。面白いね」

  「んー、凄い色っぽくて、羨ましいと思うケドなー」

  「あーもう。ズケズケと考えてる事を口に出すなマコト…」


 何かがツボったのか、ミステアが口元に手をあてて大きく笑う。

  暫くそれを見ていたが、急に止まり真面目な顔になる。


  「まぁ、それはそれとして。君達、これから何か予定あったり?」

  「いや、ありませんが…というか此処が何処だかも」

  「うんうん。何処此処?」


 ロークアーク。それがこの世界の名前。

  そして、この街はラクラスという冒険者が集う街らしい。

 それはそれとして、現実問題を突きつけられる。

  衣・住・食に必要な資金である。当然、彼女は出す気は無いと事前に言うが…。


  「一つ、稼ぐ方法を教えてあげる。そのかわりと言っては何だけど、

    稼げた結果次第で、こちらの手助けをして欲しいのよ」


 …現状、この話に乗るのが最良かと思うが、手助けというのが気になる。

  然し乗るしか無い。そう思い、それを受けた。


 それを聞くと彼女は地図を取り出すと、この街の中央にコロシアムがあり、

  毎日毎日、高額の賞金を賭けて挑戦者を募る絶対王者が居るらしい。

  

 5年程前に王者となり、全戦無敗の男らしいのだが…。

  それと戦えと言うと、何処かの能天気が元気良く手を上げる。


  「はいはーい! んじゃアタシやるー!!」


 こいつ、さっきの禁術試したいんだな。

  一応、念の為、ミステアに恐らくコイツは禁術やら強烈な魔術が

  使えるようになってんじゃ? と、ミステアに伝えた。


  「あら、それは心強いわ。その本、見せてくれるかしら…」


 そう言うと、ミステアがマコトの本を手に取ると、一瞬驚いた顔を見せる。

  聞けば、この世界のありとあらゆる魔術が記されているらしい。


 それから暫くして本を読み上げた後、マコトに何か耳打ちしている。

  ふんふんと、何度も頷き…何かヤバイ入れ知恵されてんじゃと。


 悪い予感しかしない中、俺達は中央部にあるコロシアムへと。


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