第1話 魔王蹂躙①

あの後、一瞬意識が断たれ、気が付けば俺達は見知らぬ土地。

  見慣れぬ街中に立っていた。


  「ちょっと兄貴。あれ見てすご~い。外国っぽい~」

  「じゃなくて、どうすんだこれ…」


 建造物から見るに中世ヨーロッパな造りではある。

  行き交う人々の衣服もそれに準じて…無いな。


  「何かよくあるファンタジーな格好してやがる…」

  「いかにも魔法使いですって人もいるね~」


 二人揃って高校の制服なので、異様に目立つ。

  然し着替えも何もありはしない。

 さて、取り合えずこれからどうしようか…と。

  悩む俺の隣に、妹が何故か手に持っていた分厚い本を読んでいた。


  「何それ」

  「ん~、何か持ってた。魔導全書だって」


 つまり魔法の本? …戦う力をくれると言っていた。

  つまり…つまり。


  「見て見て、禁術だってさ。どんなのだろ?」

  「うぉい!! そんなもん唱えるなよ!? おいマコト!?」


 妹の信まことが、本を左手に持ち、何かを読み上げる。


  「えーと何々。夜空に輝く星々よ? コクウ?を通りて――」

  「ちょっと待てぇぇえええっ!!!」


  「地を…何て読むのこれ」


 ああ。我が妹がアホで良かった。難しい漢字が読めないらしい。

  恐らくは、地を穿て。なんだろうが黙っておこう。

 キ○ガイに刃物ならまだ可愛い。刃物じゃなくて○兵器持たせんなよ…。

  まぁ、ボタンの押し方も知らないで良かった。


  「あ、判った。うが…もぐぐぐ」


 慌てて妹の口を両手で抑える。


  「だーっ!! 使えたらどうすんだお前ぇぇえっ!!」


 こいつ…油断できねぇ。

  そんなこんな道端でバタバタやっていると、

  いかにも魔術師らしい格好した、赤髪のお姉さんに声をかけられる。

  胸元の露出が激しく、免疫の無い俺にはもう…たまらん。


  「ちょっと君達。見かけない服ね。何処の国の人かしら」

  「うわー…オネーさん胸でっかー」

  「おいこらマコト…」


 歯に衣を着せないというか、本能のままに動いているというか。

  何とも困った奴であるが、ある意味便りにもなる。

 何事にも動じず、初対面の人にも普通に話している。

  こちらに起こった出来事を伝えると、こう彼女は答えた。


  「ふぅん…、珍しいわね。まぁ気まぐれなヤツもいるのかねぇ…」


 …なんだ。何か知ったような口ぶり。

  そのまま、行くアテも無いだろうと、俺達は彼女の家へと招かれた。


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