ドタバタ異世界ライフ~兄よ、ストレス解消に暴れる妹のケツを叩け~

@nisimatuya666

第0話 第六天魔の囁きに

 街中でたまに見かける古い建物。旧武家屋敷とか色々言われる

  そんな家が、俺の住む家である。


 中々の家柄であり、遡れば、かの有名な織田の信長さんに深く関わり

  のあるお家らしい。だが、今のご時世、それは何の意味もなく。


 ついでに言うなら家名も代わりに変わって、血統も何もあったものじゃない。

  

 それはそれとして、

  俺と妹は二人して古い物置というか蔵の掃除をさせられている。


  「うわー…めんどくせぇ」

  「埃だらけじゃない…」


 何か古い槍やら刀やら、本やら陶器やら、

  鑑定に出せばそれなりに値がつきそうな骨董品がゴロゴロと。


  「兄貴知ってた? 刀やら槍より弓のが強かったって」

  「ん~? ああ、まぁ距離詰められなければ…だろ。

    それに火縄銃もあったろうし、弓も微妙じゃね?」

  「そいえば、そだねぇ」


 見たところ、蔵の中に火縄銃は無く、近接武器のみである。

  そんな中の一本、とりわけ古ぼけた刀が目に付いた。


  「何か一本だけ奉られている感じしね?」

  「あ、ほんとだー。…何て読むのこれ」

  「ぶたにがわきりあつ? 意味わかんね…」


 部谷川切圧と書かれ、神棚に奉られていた一本の刀。

  それも埃を取り払おうと、妹が手に取った。


  「んや? 何か変じゃない?」

  「おいおい、何か…何だ!?」


 二人して幻覚でも見ているのか、視界が歪み、そのまま停止する。


 歪んだ景色が灰色一色に留まり、俺達二人はそこで戸惑う。

  此処は何処? 何が起こった? 互いに距離を近づけ警戒する中、

  そこにいる筈の無い、誰かの野太い声が聞こえる。


  「久方ぶりに、人がそれを手に持つかと思えば、

    なんとも若い者達よな」

  「だ…誰だ?」

  「我が名は他化自在天、どれ、汝等が願いでも聞いてやろうか」


 他化自在天? 何か聞いた事ある気がするが…。


  「はいはーい! どこでもイイから暴れたいでーす!

    最近ストレス溜まってるんだよネー」

  「ちょおま!?」


 すると更に空間が歪みも一種のワームホールのようなものが生み出され、

  俺達はそれに成す術無く飲み込まれるのだが…。

 もしかして、妹の変な願いが聞き届けられて?


  「良かろう。今の世では少々不便故、異世界にて存分に力に溺れるが良い」

  「お~太っ腹~!」

  「いやおま!! ちょっとまてぇぇぇぇええっ!!」


 物事に動じない妹の胆力もさることながら、

  こんなひでぇ願い聞き届けるコイツは。

  渦に飲み込まれる最中、思い出す。


 他化自在天。人間の願いを叶えてくれる神だったような。

  それもアカン方向に…なんだっけ。


 然し時既に遅く、俺達は手にした刀ごし、何処とも知れない異世界へと。


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