第262話

 ――バビロニアに到着する。

 何十日ぶりに戻って来たが、町の雰囲気は変わっていなかったように感じたが、なにか違和感があった。


「リゼさん。報酬についてですが――」


 ヤンガスからは、バビロニアに到着する前まで討伐した魔物の報酬についての話をされる。

 適正な分配が分からないので、ヤンガスから提示された内容で了承する。

 マチスたちにも礼を言うと、「アルブレストに来た際は訪ねてくれ」と言ってくれた・

もしかしたら、社交辞令なのかも知れないが、アルブレストを訪れた際はマチスたちを訪ねてみようと思う。

 ヤンガスたちは食料などを補給して、すぐにバビロニアを立つとのことだったので、別れの挨拶も早々に切り上げた。


(シャルルとレティオールは元気にしているかな?)


 二人のことを思い出しながら、久しい街並みを歩く。

 とりあえず、宿屋の確保が必要なので宿屋に向かうことにする。

 一見、変わっていないように感じていた景色もよく見ると変わっていることに気付く。

 以前なら、商人よりも冒険者の方が多かった。

 そのため、歩いていても人とぶつかるほどの混雑はない。

 違和感が人の少なさだと気付いたリゼだったが、冒険者が少なければ宿の確保も容易だと思いながら足を進める。

 宿屋“微笑みの宿”へと向かっていると、徐々に人が減っていく。

 やはり、迷宮ダンジョンからかなり離れているからだろうと思いながらも、微笑みの宿に到着する。

 宿屋の主人と軽い世間話をして、不在中の情報を聞くことにした。

 思っていた通り、冒険者の数は激減していた。

 理由はリゼがバビロニアを出立するときに起きた事件に起因する。

 シャルルやレティオールの元仲間……というか、奴隷のようにこき使っていたハセゼラたちの死体が迷宮ダンジョンの門にある扉に打ち付けれていた。

 領主の指示で撤去作業を行い、早々に迷宮ダンジョンの運営は復帰した。

 だが、その時に迷宮ダンジョンの中にいた冒険者たちは、出るに出られない状況だったことや、ミノタウロスの出現があったことによる恐怖などが重なり、安全な迷宮ダンジョンが一気に危険な迷宮ダンジョンへと評価される。

 元々、安全な迷宮ダンジョンなどはないが、自分の実力に応じた階層まで下りればいいという考えが、何度も迷宮ダンジョンに潜る冒険者たちの頭から欠落していたため、手のひらを返したように迷宮ダンジョンに挑む冒険者が減ったそうだ。

 それに近々、アルカントラ法国から傷つけられた扉の確認があるため、迷宮ダンジョン内で夜を越すことが出来ないため、深い階層まで行くことが出来ない。

 噂ではフォークオリア法国からの来客もあるらしく、町自体が緊張しているのか、以前のような自由な感じではないそうだ。

 リャンリーたちは領主から指名クエストを受注して、迷宮ダンジョン内の安全確保のため、毎日迷宮ダンジョンに潜っているそうだ。

 自分たちの目的とは異なった迷宮ダンジョンへの入場は、リャンリーたちにとってストレスになっているのか、ここ最近は宿に戻ってくるころには、かなり酒臭いと宿屋の主人は少し心配そうに話すした後、店の主人と宿泊客という間柄ではなく、何年も顔を合わせていると、自分の勝手な思い込みだが家族のように思えるのだと笑う。

 その笑顔は、どこか寂しそうだった。

 話題を変えるように、宿屋の主人にシャルルとレティオールが、今も宿泊しているかと尋ねると、部屋を教えてくれた。

 安い部屋が空いたそうで、二人とも移動をしたそうだ。

 今日は顔を見ていないので、二人とも部屋にいるのだろうと部屋のある方向に視線を移す。

 空き部屋が多いため、宿屋の主人の計らいで二人の部屋と近い部屋にしてくれた。


「有難う御座います」


 リゼは礼を言うと、自分の部屋へは行かずにシャルルの部屋に向かい、部屋の扉を叩く。


「は~い」


 少し間が空き、緊張感のない言葉が返って来た。


「リゼ‼ ……さん」


 扉を開けると、目の前にいたリゼに驚き、動きが一瞬止まった。

 思わず出会ったことのように呼んでいたことさえ気づいていない。


「お、おかえりなさい」


 予期せぬ出来事に戸惑いながら慌てふためく。


「ただいま。ごめん、寝てたよね」


 シャルルの寝ぐせのついた髪と表情から察したリゼだったが、自分の姿を思い出したシャルルは赤面して俯く。


「今日は用事あるの?」

「いいえ。今日は休むつもりでした」

「休んでいたのに、ごめんね」


 申し訳ないと思い再度謝罪すると、シャルルは顔を左右に振った。

 気まずい空気のなか、リゼは自分の部屋を口にして、部屋の場所を指差す。

 その後で、いつでもいいのでレティオールと一緒に来て欲しいと伝える。

 レティオールも寝ているかと思うと、自分よりも仲の良いシャルルに起こしてもらった方が良いと思ったからだ。


「は、はい」


 シャルルが返事をすると、隣の部屋の扉が開く。


「大声出して、どうしたの……えっ! リゼ‼」


 シャルルの声が聞こえたのか、心配したレティオールが姿を見せた。

 レティオールは運動をしていたのか、汗をかいていた。

 ぐうたらな自分と違い、運動していたレティオールを見てシャルルは目を伏せて現実逃避をする。


「ただいま。今、戻ったの。時間があればだけど、私の部屋で話でもしない?」

「うん、いいよ。体を拭いてからでもいい?」

「全然、大丈夫。私はあそこの部屋だから、用意が出来たらいつでも来て」


 リゼは自分の部屋を指差して、レティオールに教える。

 シャルルは自分が身だしなみを整えるのに時間がかかると思い、時間を気にしなくていいと言ったリゼの気遣いに感謝していた。

 出来るだけ早くリゼの部屋に行くため、シャルルは用意をすると部屋の扉を閉める。

 リゼはレティオールに軽く別れの挨拶をして、自分の部屋へと移動した。


 部屋の扉を開けると、なぜか懐かしさを感じる。

 以前に宿泊した部屋とは違うため、部屋の大きさや物の配置などが違う。

 どことなくオーリスの孤児部屋を思い出させる。

 窓を開けて部屋の空気を入れ替えながら、シャルルとレティオールが来るまでの間、少しだけ体を休めることにした。 



――――――――――――――――――――


■リゼの能力値

 『体力:四十三』

 『魔力:三十二』

 『力:二十七』

 『防御:十九』

 『魔法力:二十五』

 『魔力耐性:十二』

 『敏捷:百七』

 『回避:五十五』

 『魅力:二十三』

 『運:五十七』

 『万能能力値:五』

 

■メインクエスト




■サブクエスト

 ・瀕死の重傷を負う。期限:三年

 ・報酬:全ての能力値(一増加)


 ・殺人(一人)。期限:無

 ・報酬:万能能力値:(十増加)


■シークレットクエスト

 ・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年

 ・報酬:万能能力値(五増加)

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