第2話 マーガレットの正体(仮)

始業のチャイムが鳴り、授業が始まる。


僕は深いため息と共に、頭の中を整理し始めた。

「なんなんだよ、あの転校生。地球外生命体?マーガレット?寝言は寝て言えよ。だいたい自然植物に対する意識調査ってなんなんだ。花とか木とか特段意識とかした事なんてないんだけど...。」


「ねえ、君」


咄嗟に前を向くと前の席に座るマーガレットが話しかけてきた。


「花は好き?」


我輩は花屋の1人息子である。しかし、目の前に座る女の子があまりに可愛くってあまのじゃくな言葉を発してしまう。


「嫌い」


マーガレットは間髪入れずにこう言った。


「じゃあ好きにさせてあげる」


ふわりと微笑みながら、一言小声でぼそりと言った。頬に皺を寄せ、ちらっと見える八重歯が可愛くて僕はどきりとしてしまう。


「でもその前に、ある仕事を片付けなくっちゃ。君も手伝ってね。はっきり言って地球ヤバイよ。」


「ヤバイって、」


「ほら、そこー授業に集中しろー。いやして下さい。」


担任のS氏は怯えながらマーガレットを注意をした。


授業が終わると、先程の話しが気になって彼女を問いただした。


「地球がヤバイってどういう事?」


彼女は目を少し曇らせ、説明を始めた。


「地球の生態系は徐々ににバランスを崩しつつあるの。度重なる森林伐採や大気汚染、それから水質に土壌環境も良くないわ。それもこれも、あなたたち人間のお陰ね。皮肉っぽく言ってしまうのは許してほしい、私のお姉ちゃんはそれで死んでしまったから。だから私は、地球の生命体をこれ以上、失う訳にはいかないの。これはもう、あなた達だけの問題ではないから。だからこうして私が派遣された。自然をなくす事はあなた達の命をも脅かす事になる。言い換えるとあなた達、人間を救う為に来たとも言えるわ。いわば救世主ね。」


「なるほど、君は人類を救う為の救世主だったのか」


僕は頭のいい奴は嫌いだが、頭のイカれてるやつはもっと嫌いだ。


その時からマーガレットを意識的に遠ざける学校生活が始まるのだか、時代の分岐点に自分が立たされている事に気がつくのはまだ先の話。


近づいてくる不気味な足音は鳴りを止まず、狂気と焦燥を含んだ不穏な空気が漂い始めていた。



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