第9話

「あの朝?するとあの男性は、和歌子さんのお兄さん?」

「はい、兄です。大西さん、何も声をかけてくれなかったから、どうしたのかと」

その瞬間、すべてが氷解した。てっきり、結婚を約束している男性だと思っていたのだ。

「和歌子さん。仕事の方はどうされているのですか?」

「図書館司書ですね。辞めました。あの頃、ちょうど過渡期にさしかかっていて、大西さんに話せないでいたんです。今は、父の会社で事務をやっています」

はじめて明かされた真実。ずっと、ずっと、気にしてばかりいた謎が、今解けた。

「立ち話もなんです。少し歩きませんか?」

「はい!」

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